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競馬式スクリーン v1 — 能力 × オッズは効いたか

効いたのはオッズ (PBR、PER) と馬場 (業種の勢い) で、能力 (会社予想) は効かず、52 週高値からの下落率は逆に効いた。会社予想は控えめなら上振れ、強気なら下振れの裾が重く、能力にも PER の分母にも向かない。v2 は能力もオッズも実績で測る。

株式を競馬に見立て、能力 × オッズで期待値を付けて上位を買う。この見立てが 2025-04 から 2026-09 の 6 四半期で効いたかを、出し方 v1 で確かめた。

v1 の 3 要素はこう置いた。どれも時点で読めた最新の短信の表紙と株価だけで作り、各指標を 全銘柄の中で 0〜1 の順位にしてから平均する。

要素 使った指標
能力 予想営業利益率、予想営業増益率、予想 ROE (いずれも会社予想)
オッズ 予想 PER と PBR (低いほど上位)、ネットキャッシュ比率、52 週高値からの下落率 (深いほど上位)
馬場 業種の直近 20 営業日の中央値騰落

期待値 = 能力 × オッズ。馬場は掛けずに、あとで層別に見る。

母集団

時点は四半期の頭の 6 つ。先行リターンは次の時点まで。最後の 2026-07-01 だけ 2026-09-11 までの 2 か月半になる。

時点 銘柄数 期待値あり 予想 PER あり ネットキャッシュあり
2025-04-01 3593 3369 3124 2982
2025-07-01 3605 3376 3212 3020
2025-10-01 3633 3423 3254 3052
2026-01-05 3671 3464 3250 3087
2026-04-01 3673 3464 3249 3096
2026-07-01 3669 3350 3190 3064

今の上場銘柄で過去の断面を作っている。上場廃止した銘柄は落ちている。

期待値 5 分位の先行リターン

6 時点を束ねたもの。q5 が期待値の上位 20%。

分位 n 中央値 平均 上昇割合
q1 4068 1.42% 4.60% 55.8%
q2 4068 2.97% 5.11% 61.7%
q3 4065 2.86% 5.89% 61.1%
q4 4064 2.62% 5.36% 60.2%
q5 4063 2.74% 5.27% 59.8%

下位 20% を避ける効果はあるが、上位 20% が抜けていない。 q2 から q5 が横並びになる。

時点別の中央値。2025-04・07 と 2026-07 は q5 が最も高く、2026-01・04 は q5 が最も低い。

時点 q1 q2 q3 q4 q5
2025-04-01 2.31% 2.96% 3.72% 3.27% 4.58%
2025-07-01 3.29% 6.19% 7.41% 7.41% 8.24%
2025-10-01 1.23% 5.43% 4.21% 3.73% 3.22%
2026-01-05 1.43% 2.73% 1.56% −1.14% −1.92%
2026-04-01 −3.14% −3.41% −3.21% −3.16% −2.37%
2026-07-01 3.33% 3.21% 4.08% 4.20% 5.21%

上昇した割合も同じ形で、2025-07-01 の q5 が 78.3% で最も高く、2026-04-01 の q1 が 35.2% で 最も低い。

能力 × オッズの 2×2

それぞれ中央値で上下に割った。

能力 オッズ n 中央値 平均
低 低 4631 1.36% 4.49%
低 高 5505 3.92% 6.55%
高 低 5559 1.53% 4.58%
高 高 4633 2.67% 5.25%

オッズが高い側が勝ち、能力はむしろ低い側が勝つ。 「能力が高いのに人気で買われている 馬」(高・低) は 1.53% で、「能力が低くて人気もない馬」(低・低) とほぼ同じ。競馬の見立ての うち「人気馬を買わない」は成り立つ。「能力が高い馬を選ぶ」は、この能力の定義では成り立たない。

要素ごとの効き

上位 20% と下位 20% の先行リターン中央値の差。

要素 上位 − 下位 上位 20% 下位 20%
PBR (低いほど上位) +4.84 4.08% −0.76%
予想 PER (同) +3.95 3.87% −0.08%
オッズ +3.06 3.56% 0.50%
馬場 (業種の勢い) +2.09 3.64% 1.54%
期待値 +1.33 2.74% 1.42%
予想営業利益率 +0.39 1.84% 1.45%
予想 ROE −0.58 1.11% 1.68%
ネットキャッシュ比率 −0.76 2.29% 3.05%
能力 −0.90 1.52% 2.41%
予想営業増益率 −1.51 1.47% 2.98%
52 週高値からの下落率 (深いほど上位) −2.58 0.30% 2.88%

3 つ分かる。

効いたのは PBR と PER。 どちらも単独で期待値 (+1.33) より強い。オッズに下落率と ネットキャッシュを混ぜたぶん、期待値が薄まった。

下落率はオッズではない。 高値から深く下げた銘柄は、次の四半期も下がる側にいる。1 四半期 の保有では逆張りより順張りになる。オッズと呼ぶなら PBR と PER までにとどめる。

能力は効かない。 会社予想の増益率が高い銘柄ほど先行リターンが低い。織り込みか、 強気の予想が下方修正で終わるのかを分けるため、2 つ確かめた。

予想増益率の上位 20% と下位 20% を、予想 PER の安い半分と高い半分で割った先行リターンの中央値。

PER 安い半分 PER 高い半分
予想増益率 上位 20% 2.88% (n=1342) 0.69% (n=2095)
予想増益率 下位 20% 4.43% (n=1582) 1.78% (n=1860)

織り込みは半分ある。増益率上位の 6 割は PER の高い半分にいて、買う時点で既に高い。 しかし同じ PER の側で比べても、増益率上位は下位に負けている。安く放置された強気予想でも、 控えめな予想の安い銘柄に勝てない。

もう 1 つ。増益率上位 20% を、短信の開示日から買う時点までの騰落で 3 分位に割った。 10% 下げた組が 1.44%、動かなかった組が 1.70%、12% 上げた組が 1.13%。全体の中央値 (2.6% 前後) を 3 組とも下回る。市場が反応したかどうかに関わらず、予想が高い銘柄は弱い。

予想そのものが外れているのかを、時点の通期予想営業利益とその年度の本決算の実績で 確かめた。年度が終わった分だけ。

予想増益率 n 達成率の中央値 10% 超の未達 10% 超の超過
下位 20% 2735 110.2% 21.8% 50.6%
2 2733 104.8% 14.1% 34.0%
3 2732 102.6% 17.8% 25.5%
4 2729 101.8% 23.1% 26.9%
上位 20% 2729 102.4% 34.0% 33.2%

上位 20% でも達成率の中央値は 102% で、真ん中の会社は予想どおりに着地している。予想が 外れているのではない。違うのは分布の形で、控えめな予想は半分が 10% 超で上振れし、強気の 予想は 3 社に 1 社が 10% 超で下振れする。株価は予想どおりの着地には反応せず、上振れに 買い、下振れに売る。予想の水準を能力にすると、この偏りを逆向きに拾う。

同じ偏りは予想 PER の分母にも入る。強気の予想 EPS で割ると PER は実際より低く見え、 下振れしがちな銘柄が「安い」側に紛れる。分母を替えて効きを比べた。

分母 n 上位 20% − 下位 20%
PBR (実績の自己資本) 17578 +5.91
実績 PER (時点以前の最新の本決算 EPS) 17642 +4.73
予想 PER (会社予想 EPS) 16392 +4.28

母集団は時点以前 400 日に本決算の短信がある行。PER で安い上位 20% を予想増益率の上下で 割ると、予想 PER では強気予想が 1286 銘柄入って 2.88%、控えめ予想は 4.21%。実績 PER に 替えると強気予想は 839 銘柄に減り、その側も 3.71% に上がって差が 0.48 に縮む。 会社予想は能力にもオッズにも入れない。 分母は実績にする。

なお全銘柄では、開示後に上げた組のほうが次の四半期も良い (上位 3 分の 1 が 2.83%、 下位が 1.83%)。反応した後に買っても遅くない。下落率の結果と同じで、1 四半期では順張りの 向きになる。

時点別

上位 − 下位の差 (%)。全体は全銘柄の先行リターン中央値。

時点 全体 PBR PER 馬場 能力 下落率
2025-04-01 3.3 −4.5 −0.2 0.2 4.5 1.0
2025-07-01 6.1 10.3 11.0 1.1 −1.2 −3.4
2025-10-01 3.2 10.9 8.5 10.3 −3.3 −10.2
2026-01-05 0.3 7.2 1.5 8.4 −5.7 −8.8
2026-04-01 −3.2 4.1 2.0 −3.6 0.2 −5.3
2026-07-01 4.0 2.2 3.3 −2.4 −1.0 5.6

PBR は 2025-04 の 1 回だけ負けている。関税ショックの戻り局面で、下げた銘柄の反発が割安を 上回った時期にあたる。馬場は 2025-10 と 2026-01 で 10 ポイント近く効いたあと、2026 年 4 月から反転した。 業種の勢いは続くときと折れるときがあり、v1 の 20 営業日では短い。

市場区分と時価総額

PBR の効きは区分ごとに、プライム +6.80、スタンダード +3.14、グロース +3.93。小型株の癖 ではない。 能力はプライムで −3.65 と最も逆に効く。

時価総額 3 分位 × 割安 (PBR と PER の順位の平均) で見ると、割安上位 20% の中央値は小型 3.15%、中型 4.55%、大型 8.68%。割安下位 20% は −1.31%、−0.50%、0.25%。大型ほど割安の 効きが強い。 2025 年度は東証の PBR 改善要請に沿った大型バリューの局面だった、という読みと 矛盾しない。ただし出典を付けていないので、ここでは書かない。

馬場で層別

期待値上位 20% を、業種の勢いの順位が 0.5 以上か未満かで分けた。

馬場 n 中央値 平均
良 1704 3.04% 5.73%
悪 2359 2.42% 4.94%

差は 0.6 ポイント。効く時点と折れる時点が相殺している。掛けるか添えるかは v2 の宿題。

今日の断面

2026-09-11 の断面を v1 の定義のまま出すと、上位は時価総額 100 億円未満のグロース・ スタンダードが並ぶ。予想増益率が 100% を超える銘柄と、高値から 4 割以上下げた銘柄が多い。 上の検証で効かないと分かった要素で選ばれているので、この上位をそのまま買う根拠は無い。 断面の上位 30 は analysis/keiba-v1.sql の「最新時点の上位 30 銘柄」の節で出る。

次に試すこと (v2 の案)

v1 で分かったことを全部使うと、v2 の要素はこう置き換わる。会社予想はどこにも入れない。

オッズは「基準に対する株価の安さ」と定義する。v1 の 4 つは基準が違う。

指標 基準 基準が株価に届くまで
PER 会社が稼ぐ利益 次の決算で更新される
PBR 会社が持つ純資産 動きが遅い。外の力 (東証の要請など) が要る
ネットキャッシュ比率 会社が持つ現金 会社が使うか配るまで届かない
52 週高値からの下落率 過去のある時点の株価 基準そのものが値付けで、正しかった保証がない

基準は会社の中身 (利益、純資産、現金) に限る。 下落率が v1 で逆に効いたのは、基準が 過去の株価だったため。高値からの下げは「高値が間違っていた」のかもしれない。競馬で言えば 上の 3 つは「戦績に対してオッズが甘い」で、下落率は「先週よりオッズが上がった」にあたり、 後者はたいてい厩舎に何かあったしるしになる。

基準が株価に届く速さは保有期間に合わせて選ぶ。1 四半期なら利益が最も近く、現金は遠い。

要素 v1 v2 の案
能力 会社予想の営業利益率・増益率・ROE 実績の営業利益率 (直近通期)、営業利益率の変化 (前期比)、実績 ROE、直近四半期の進捗率 (通期予想に対する実績の割合)
オッズ 予想 PER、PBR、ネットキャッシュ比率、下落率 PBR、実績 PER の 2 つ。下落率は外す。ネットキャッシュは定義を直して単独で再検証し、効かなければ合成に入れない
馬場 業種の直近 20 営業日 業種の直近 20 日と 60 日の両方を出し、どちらが折れにくいかを見る

進捗率だけは通期予想を分母に使う。「予想どおりなら株価は動かない」の裏返しで、予想より 速く積み上がっている会社を拾うためになる。予想の水準ではなく、予想からのずれを見ている。

組み方の順も変える。v1 は先に混ぜてから要素ごとの効きを見たので、効かない要素が 合成を薄めた。v2 は要素ごとの単独の効きを先に出し、効いたものだけを合成する。合成の 前に要素どうしの順位の相関を出し、PBR と実績 PER のように重なる組は 1 つに絞る。

馬場は「掛けた期待値」と「添えただけの期待値」を同じ表で比べ、掛けるかをそこで決める。

ネットキャッシュ比率を v1 の結果 (−0.76) だけで落とさないのは 3 つ理由がある。1 四半期は 安全性の指標が株価を動かす期間として短い。有利子負債の拾い方が IFRS の会社で甘く、負債が 少なく見える会社が上位に入っていた。「混ぜる前に単独で見る」と決めた以上、v1 の混ぜた 結果で落とすのは筋が通らない。v2 では定義を直したうえで、順位として効くかと、足切り (ネット負債が時価総額の半分を超える銘柄を外す) として効くかの両方を見る。

下落率も、基準を株価から会社の中身に替えれば候補に戻る。「株価は下げたが会社予想は 据え置き」の銘柄だけを拾い、下げ幅で順位を付ける。下げた理由が会社の中身でないものを 選ぶことになる。

実績の値は latest_financials の year と year_end、四半期の実績は ytd から取れる。 時点ごとの断面には financials を available_at で絞る。予想 EPS と実績 EPS は表紙に あるが、実績 EPS は本決算の短信にしか載らないので、時点以前の最新の本決算を別に引く。

未確定

  • 強気の予想が 10% 超で下振れる会社は、業種や規模に偏りがあるか。達成率の分位を 市場区分と業種で割れば分かる
  • 上場廃止した銘柄が母集団から落ちている。stock_snapshots で時点の上場銘柄を取れば直る
  • 2026-04-01 の断面だけ全体の中央値が −3.21% で、期待値の効きが消えている。下げ相場で 何が効くかは 1 回では分からない
  • 有報の「主要な経営指標等」に実績 ROE と PER の 5 期分が載る。能力の実績版はここから 取れるはずだが、時点ごとに使えたかは available_at で確かめていない