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AI inside (4488) — 伸びが鈍った AI-OCR の会社

売上は年 5〜8% の伸びに落ち着き、営業利益率は 3 期で 10.7% から 6.5% まで下がった。2026/3 期は、のれん償却 3.3 億円が消えたのに減益だった。人件費と研究開発とオフィスの増加が上回っている。経常増益は補助金 1.9 億円による。第 1 四半期は営業利益 +84% だが、売上原価の労務費・外注費の減少と株式報酬の減少で出したもの。売上は +5.1% で、会社予想の +10.2% に届いていない。新事業の Leapnet は 2026 年 5 月に正式提供したばかりで、売上は開示されていない。会社予想が数字で当てにしているのは DX Suite の契約数で、1 年で +21.6% と過去 3 期の 3〜5 倍の純増を置く。Q1 は Lite の値上げで逆に 67 件減った。株価は 2024 年 3 月の高値から 81% 下げた。高値は AI 銘柄が揃って上げた局面で、下げは同業の中でも最も深い。 2025 年 6 月の 3 日で +57% は会社の材料が無く、「AI エージェント」のテーマ買いだった。

AI-OCR「DX Suite」の会社。東証グロース、情報・通信業。決算期は 3 月で、非連結。人工知能事業の 単一セグメントなので、セグメント情報は無い。

売上は伸びているが、利幅は 3 期続けて縮んだ

期 売上高 営業利益 経常利益 純利益 営業利益率
2021/3 45.97 — 23.39 16.61 —
2022/3 33.11 — 5.64 4.12 —
2023/3 38.03 — 2.79 -5.19 —
2024/3 41.91 4.49 4.28 5.36 10.7%
2025/3 44.00 3.85 4.05 -4.97 8.8%
2026/3 47.48 3.11 4.87 3.51 6.5%
2027/3 予想 52.30 5.23 5.15 3.62 10.0%

単位は億円。2021/3 期の売上 46 億円と経常利益 23 億円は、翌期に 33 億円と 5.6 億円へ落ちた。 売上は 5 期かけても 2021/3 期の水準をまだ少ししか超えていない。経常利益率は 51% から 10% 前後に なった。

落ちたのは、販売パートナーの NTT 西日本が契約の一部を更新しなかったためになる。NTT 西日本は DX Suite の Lite プランを「おまかせ AI OCR」の名前で売り、2021 年 3 月末に 9,284 件を抱えていた。 多くのユーザーが最低利用期間の 12 か月を待たずに解約し、会社は 2021-04-28 に、2022/3 期の売上が 17.63 億円減る見込みを開示した。売上の約 4 割にあたる。株価は翌営業日から 2 日続けてストップ安に なった。OEM なので AI inside は営業にもユーザーのサポートにも関われず、解約の多さは 2021 年 4 月 まで見えていなかった、と社長は説明している (2021-05-17 の日経クロステック)。

2021/3 期の高い利益は、1 社経由の大量の Lite 契約に乗ったものだった。今の 10% 前後の利益率の ほうが、この会社の地力に近いと読める。有報の「経営方針」が今もパートナー販売の比率を上げると 書いている点は、この経緯と合わせて読む。

売り方は、製品を作ってパートナーに売らせる型になる。2026/3 期の売上の 95% が月額課金の リカーリングで、取引ごとの売上は 2.6 億円しかない。販売パートナーは 132 社 (2026 年 6 月末)。 ただし経路で見ると直販も半分ある。パートナー経由 24.1 億円 (+4.7%) に対して直販 23.4 億円 (+11.4%) で、伸びは直販のほうが速い (経路別の数字は下の新事業の節)。新事業の Leapnet は アライアンス先との共同実証から始まっていて、DX Suite より個別の作り込みが多い。製品を代理店が 売る形なら人を増やさずに売上を積めるが、作り込みは人手がかかる。2026/3 期に販管費が膨らんだ のは、この移行の途中とも読める。

大口の売り先は NTT データだけで、パートナーの顔ぶれは 2 年変わらない

有報の「重要な契約等」は該当なし。売上の 10% を超える相手は NTT データ 1 社だけで、 2025/3 期 4.89 億円 (11.1%) から 2026/3 期 5.65 億円 (11.9%) に増えた。NTT データは LGWAN (自治体専用の閉域網) 経由で自治体に DX Suite を出している。成長戦略が「国産を率先して買う」と 書く公共の AX/DX 基盤に、いちばん近い経路になる。

誰を通して売れているかは、期末の売掛金の相手先から見える。売掛金は売上の約 40 日分で、 相手先ごとの支払い条件で順位は多少ずれる。

順 2025/3 末 千円 2026/3 末 千円
1 NTT データ 70,268 NTT データ 75,929
2 NTT 東日本 45,201 NTT 東日本 41,192
3 トランスコスモス 35,728 トランスコスモス 35,277
4 富士フイルムビジネスイノベーション 27,555 富士フイルムビジネスイノベーション 33,297
5 リコージャパン 21,226 ダイワボウ情報システム 30,306
6 ダイワボウ情報システム 20,212 リコージャパン 17,775
7 スターティアレイズ 14,603 ヒューマンリソシア 13,418
8 NTT 西日本 12,482 NTT 西日本 11,683
9 大日本印刷 12,075 大日本印刷 10,295
10 TOPPAN エッジ 11,506 JSOL 9,380
売掛金の合計 569,631 売掛金の合計 557,176

上位は NTT グループ 3 社、事務機の販売会社 (富士フイルム BI、リコージャパン)、IT 商社 (ダイワボウ情報システム)、BPO (トランスコスモス)、印刷 (大日本印刷) が並ぶ。NTT の 3 社で 2026/3 末の売掛金の 23% を占める。2021 年に売上の 4 割を失ったあとも、NTT グループが最大の 経路であることは変わっていない。伸びたのはダイワボウ情報システム (+50%) と富士フイルム BI (+21%) で、全国の販売店網を持つ会社になる。

2 つの顔を持つ相手もいる。大日本印刷は売り先であると同時に、2.51% を持つ第 4 位の株主になる。 2018-01-19 に資本業務提携を結び、DNP は手書き帳票のデータ入力などの BPO に AI inside の AI-OCR を入れた。自社の BPO の現場で使いながら、顧客にも売る関係になる。

リコーは逆で、販売パートナーであり、競合にもなりつつある。リコージャパンは DX Suite を売る 一方、リコーは自社の LLM と、社内で動かす「オンプレ LLM スターターキット」を出している (テーマの地図 の閉域の工程)。リコージャパン向けの 売掛金は 21,226 千円から 17,775 千円に 16% 減った。1 年の売掛金だけで、売れ行きが落ちたとは 言えない。ただ、事務機の販売会社が自社の AI を持ち始めると、AI inside の製品を売る理由は 細る。同じことは、自社で資料検索の AI を出す TOPPAN の子会社 (TOPPAN エッジ、2026/3 末で 上位 10 社から外れた) にも言える。

2021/3 期から 2023/3 期の営業利益が空いているのは欠損ではない。有報の「主要な経営指標等」 に営業利益が載らないため、当期と前期しか遡れない。

直近 3 期は売上が年 5〜10% 伸びている。一方で営業利益率は 10.7% → 8.8% → 6.5% と下がった。 売上の 9 割超は「リカーリング型」で、2026/3 期は 44.9 億円 (+7.1%)。DX Suite のライセンス数は 2,790 → 3,057 → 3,203 件と増えている。会社は解約率も低水準と説明している。積み上げ型の売上は 崩れていない。削られているのは費用の側になる。

2026/3 期の減益は見た目より重い。会社の説明では、販管費は前期比 +12.4% の 35.9 億円。のれんの 償却額が 3.29 億円減ったのに、人件費、研究開発費、新オフィスの賃借料、広告宣伝費、Web サービスの利用料の増加がそれを上回った。償却の減少分 3.29 億円を前期に足し戻して比べると、営業利益は約 7.1 億円から 3.1 億円へ 半分以下になった計算になる (試算)。

経常利益が増益なのは補助金収入 1.85 億円による。前期は 0.39 億円だった。会社予想の 2027/3 期は 経常利益 (5.15 億円) が営業利益 (5.23 億円) を下回る。補助金を見込んでいない形になる。

純利益の赤字 2 期のうち、2025/3 期の -4.97 億円は特別損失による。2022 年に買収した aiforce solutions ののれん 6.85 億円を減損した。この減損で翌期からのれん償却が消えた。

期末 総資産 純資産
2024/3 72.07 49.58
2025/3 69.43 45.23
2026/3 68.08 49.43

2026/3 期末の自己資本比率は 72.6%。現金及び預金は 47.7 億円で、短期借入金は 10 億円ある。

第 1 四半期の増益は費用減で、売上は予想に届いていない

2027/3 期の会社予想と、第 1 四半期 (2026-04-01 〜 2026-06-30) の実績。

項目 通期予想 Q1 実績 進捗 前年同期 前年比 前年の Q1 進捗
売上高 52.30 11.91 22.8% 11.33 +5.1% 23.9%
営業利益 5.23 1.83 35.1% 1.00 +83.7% 32.1%
経常利益 5.15 1.81 35.1% 0.97 +87.1% 19.9%
純利益 3.62 1.20 33.2% 0.75 +59.4% 21.4%

単位は億円。前年の Q1 進捗は、2026/3 期の Q1 実績を同期の通期実績で割ったもの。

利益の進捗は売上より速い。ただし売上の伸びが足りない。 会社予想の売上は +10.2% で、Q1 は +5.1% にとどまった。進捗 22.8% は前年の 23.9% を下回る。予想の増収は、DX Suite の機能拡張と 新事業「Leapnet」の立ち上げが前提になっている (本決算短信の「今後の見通し」)。

営業利益の +83.7% は費用の側で出ている。損益計算書を並べると次のようになる。

項目 前年 Q1 当 Q1 前年比
売上高 11.33 11.91 +5.1%
売上原価 2.16 1.90 -12.0%
売上総利益 9.17 10.01 +9.1%
販管費 8.18 8.17 0.0%
営業利益 1.00 1.83 +83.7%

会社は、売上原価の減少を労務費と外注費の減少と説明している。サーバー代は増えている。販管費は 研究開発費、減価償却費、Web サービスの利用料が増え、株式報酬費用と福利厚生費が減って横ばい になった。増えた粗利 0.84 億円がそのまま営業利益に乗った形になる。

前年は販管費が +12.4% 伸びて減益になった。今期は販管費を止めている。利幅の回復は、費用を 抑え続けられるかにかかっている。 売上の伸びが +5% のままなら、通期で予想の 523 百万円に届く かは費用次第になる。通期予想は Q1 時点で据え置かれている。

純利益の +59.4% は営業利益の伸びより小さい。法人税等調整額が前年の -0.04 億円から +0.31 億円に なったためで、特別損益は無い。

新事業は売上がまだ開示されていない

会社は 2027/3 期の重点を 2 つ挙げている。DX Suite を「AI-OCR から AI エージェント実行基盤へ」 進化させること。それと Leapnet 事業の本格立ち上げ。後者には Sovereign Grid と、新型ハード Cube Atlas が付く。どれも発表は揃っているが、売上や契約数はどの資料にも出ていない。

Leapnet は AnyData と Heylix を束ねた LLM 基盤

有報の「事業の内容」によると、Leapnet は既存の AnyData (マルチモーダル AI) と Heylix (生成 AI エージェント) を統合した基盤になる。社内の PDF や画像を取り込んで RAG で知識化し、自然言語の 指示で AI エージェントを作る。作ったエージェントは API で自社システムに組み込むほか、外部に 売って収益にもできる。モデルは自社の LLM「PolySphere-4」を使う。

時期 出来事
2025-07 Leapnet の EA 版を提供開始
2025-10 PolySphere-4 にアップデート
2026-05-13 Leapnet を正式提供。料金は 1,000 トークンあたり 2 円の従量課金
2026-06-24 Cube Atlas 192x の受注開始と Sovereign Grid の始動。アイネットと基本合意
2026-06-25 橋本ホールディングス (建設、静岡県焼津市) と包括連携協定。7 月から共同実証

料金は使った分だけ払う従量課金になる。DX Suite のような月額の基本料が無いので、使われるまで 売上が立たない。橋本ホールディングスは 7 月から実証を始めたところで、アイネットとの実証は 「2026 年度内」の予定。Q1 時点の Leapnet は、有償で本番運用されている段階にまだ無いと読める。

橋本ホールディングスとの協定は、契約ではなく枠組み

相手は静岡県焼津市の建設会社、橋本組 (1922 年創業) を中核とする非上場のグループになる。 上場している橋本総業ホールディングス (7570) とは別の会社。

橋本組の発表 (2026-06-25) が挙げる連携のテーマは、建設業での DX と AI の研究・実証、施工管理・ 検査・事務の生産性向上、AI エージェントによる業務変革の検討など。2026 年 7 月から建設現場で 共同実証を始める。実証の期間、使うデータ、Cube を使うかどうかは書かれていない。

発表は、この協定を「個別事業や契約条件を定めるものではなく、将来に向けた共創のための包括的な 連携枠組み」と明記している。今の時点で売上を約束するものではない。

面白いのは協定の 2 か月前の動きになる。橋本組は 2026-04-13 に、自社サイトで渡久地社長との 対談「AI インフラは誰がつくるのか」を載せている。AI を電気や道路のような地域のインフラとして 捉え、データの主権を地域が持つべきだという内容で、ここで「焼津モデル」の構想が出てくる。 Q1 の決算説明資料も、この協定を「AI inside Cube/Leapnet 等の技術基盤が、地域産業の AI 基盤作り へ貢献」「Sovereign Grid 連携」と位置付けている。

建設現場の業務改善は入口で、狙いは地方の建設会社を Sovereign Grid の地域の拠点にすること と読める (資料の書きぶりからの読みで、どちらの会社もそうは書いていない)。建設会社は土地と電力と 地域の取引先を持つ。成り立てば、DC 事業者に続く 2 つ目の拠点の型になる。

Sovereign Grid と Cube Atlas はデータセンター向けのハード事業

Sovereign Grid は、国内のデータセンター事業者の施設に Cube Atlas 192x を置く構想になる。 それらを束ねて推論のネットワークにし、その上で Leapnet を動かす。Cube Atlas 192x は現行の AI inside Cube の 192 倍の計算能力を持つとされ、Leapnet の全機能を閉域で動かせる初めての機種。 提供はサブスクリプションで、価格と出荷時期は発表に無い。

第 1 号パートナーのアイネットとは基本合意の段階で、中身は実証になる。受注の件数は Q1 の決算 説明資料にも載っていない。

珍しいのは箱ではなく、他社の DC に置いて束ねる形

「データを国外に出さずに AI を動かす」こと自体は、2026 年に入って各社が一斉に手を付けている。 大きく 2 つの型がある。

1 つは、通信会社やクラウド事業者が自社の DC で国内完結の AI を出す型。ソフトバンクは 2026-04-16 に、国産 LLM「Sarashina」を自社 DC のクラウドで 6 月から順次提供すると発表した。 データ主権を前面に出している。自前の DC と GPU に投資できる大手の事業になる。

もう 1 つは、顧客の社内に置く箱。LLM と RAG をサーバーに入れて売る型で、競合は多い。

発表日 会社 製品 中身
2026-03-27 リコー、CTC リコー製 LLM 搭載の超小型 AI サーバー 270 億パラメータの自社 LLM と Dify を入れたデスクサイド機
2026-09-24 Cuon (テラスカイの子会社) Private AI Appliance 社内に置く箱とクラウドの管理で構成。11 月 1 日から提供

AI inside の Cube も、単体で見ればこの 2 つ目の型に入る。違うのは、その箱を他社の DC に置いて ネットワークで束ねる点になる。会社の発表では、DC 事業者は電力と設置場所を出すだけでいい。 AI モデルもソフトも調達せずに、自社ブランドの推論サービスを売れる。AI inside はモデル (PolySphere)、基盤 (Leapnet)、ハード (Cube) の 3 層を一体で出す。自前の DC を持たずに国内の 推論網を作ろうとしている形で、今回当たった範囲では同じ型の国内企業は見つからなかった。

規模の構想は大きい。渡久地社長は、将来は約 30 社の参加で 1,000 億円規模のインフラに広げる 構想を語っている (2026-05-21 の週刊BCN)。これは DC 側の投資規模の話で、AI inside の売上では ない。会社の発表は、参加パートナーを 2026 年内に発表するとしている。

収益の分け方と、Cube を誰が持つかはどの資料にも書かれていない。AI inside が箱を持って DC に 置くなら、時価総額 84 億円の会社には重い設備投資になる。DC 側が買うなら、ハードの売上が立つ。 事業の性格がここで大きく変わる。

新事業の寄与は、直販の伸びからしか推せない

手がかりは 1 つだけある。2026/3 期の決算説明資料は、売上を販売経路で分けている。

経路 2025/3 2026/3 前年比
当社販売 20.98 23.38 +11.4%
パートナー販売 (OEM を含む) 23.01 24.09 +4.7%

単位は億円。会社は当社販売の伸びを「Cube/Leapnet 関連の売上増等」によると説明している。 この 2.4 億円の増加に DX Suite の直販も含まれる。新事業の分はこれより小さい。

会社予想の増収は、新事業より DX Suite の契約増を当てにしている

2026/3 期の決算説明資料は、2027/3 期の売上 52.3 億円 (+10.2%) の内訳として DX Suite の期末 契約数を出している。これを過去の実績と並べた。

プラン 2024/3 末 2025/3 末 2026/3 末 2027/3 末 計画 2026/6 末 実績
Lite 1,251 1,424 1,506 1,933 1,443
Standard + Pro 1,371 1,424 1,488 1,701 1,492
Edge (Cube 用) 168 209 209 261 201
合計 2,790 3,057 3,203 3,895 3,136

計画は 1 年で +692 件 (+21.6%)。過去 3 期の増え方は +222、+267、+146 件だった。計画は過去の 3〜5 倍の純増を置いている。 会社はその根拠を PolySphere-4 による読み取り精度の訴求と機能 強化と説明している。

ところが Q1 は 67 件減った。減ったのは Lite で、1,506 → 1,443 件。Q1 の決算説明資料は、Lite の 基本料金の引き上げで解約が出たと説明している。一時的で期初の計画の範囲内、とも書いている。 Lite の新規受注は 88 件 (前年同期比 +11.4%) あった。計画に届くには、残り 3 四半期で +759 件が 要る。

料金表では Lite の月額は 40,000 円になっている。値上げが効くのは Q2 以降で、解約だけが先に Q1 に 出た形になる。仮に値上げ幅が月 1 万円で、1,443 件がすべて直販の料金なら、年 1.7 億円の増収に なる (上限の試算。パートナー経由の料金は違い、旧料金も確かめていない)。

まとめると、予想の +10.2% の根拠として会社が数字で示しているのは、DX Suite の契約数だけ になる。 Leapnet の売上見込みは出ていない。 Leapnet が効くかどうかを数字で見られるのは、 早くても実証が終わる 2026 年度末以降になる。

株価は 2024 年 3 月の高値から 81% 下げた

日付 終値 出来高
2024-03-05 11,180 273,300
2025-06-20 4,775 854,700
2026-06-10 1,942 29,300
2026-09-25 2,118 3,800
年 安値 高値
2024 2,968 11,180
2025 2,389 4,775
2026 1,942 2,847

2026-09-25 の終値 2,118 円で、時価総額は約 84 億円になる (自己株式を除く 3,976,660 株)。 予想 EPS 91.62 円に対して予想 PER 23.1 倍。1 株純資産は Q1 末で約 1,295 円で、PBR 1.6 倍。

現金及び預金は Q1 末で 40.0 億円、短期借入金は 7 億円。差し引き 33 億円で、時価総額の 4 割に あたる。これを除いた事業の値段は約 51 億円で、予想営業利益の 10 倍弱になる (試算。現預金を すべて余剰とみなした場合)。

出来高は薄い。2026 年 7〜9 月の 1 日平均は 6,000〜10,000 株で、金額にすると 1,300〜2,200 万円 ほどになる。

高値は AI 銘柄の一斉高、下げは同業でも最も深い

2024 年初から高値の日までと、高値の日から直近までを、AI を事業にするグロース・スタンダード 銘柄と並べた。騰落は%。

コード 銘柄 2024-01-04 → 03-05 2024-03-05 → 2026-09-25
4488 AI inside +70.2 -81.1
5240 monoAI technology +61.2 -75.0
4011 ヘッドウォータース +122.4 -73.6
3858 ユビキタスAI +149.3 -63.7
4382 HEROZ +20.6 -57.5
3993 PKSHA Technology +91.6 -52.1
5586 Laboro.AI +118.6 -45.0
5574 ABEJA +87.8 -43.5
4476 AI CROSS +4.4 -19.3
— グロース情報・通信業の中央値 +6.2 -16.5
— グロース市場の中央値 +2.1 -13.2
— 全市場の中央値 +3.7 +18.5

2024 年 1〜3 月の上げは AI inside 固有ではない。AI を掲げる銘柄が揃って 60〜150% 上げている。 市場全体とグロースは数% しか動いていない。AI 銘柄への資金流入の中で上げたと読める。

その後の下げも AI 銘柄に共通する。ただし AI inside の -81.1% は並べた中で最も深い。同じ期間に 営業利益率が 10.7% から 6.5% に下がっており、固有の悪材料が重なった可能性がある。

2025 年 6 月の急騰は「AI エージェント」のテーマ買いで、会社の材料は無い

2025 年 6 月 18〜20 日に、3,040 円から 4,775 円まで 3 日で 57% 上げた。19 日は始値から値幅制限 いっぱいの 4,325 円 (ストップ高)。20 日の出来高 85.5 万株は、直前 1 か月の 1 日平均 7,186 株の 約 120 倍になる。

AI inside 固有の動きで、市場も AI 銘柄も動いていない。 6/17 → 6/20 の騰落は全市場の中央値が -0.1%、グロースが -0.3% (3,578 銘柄)。上の表の AI 銘柄も -4.5〜+17.7% に収まる。全市場で 騰落率が最も大きかったのが AI inside だった。

一方で会社の材料は見当たらない。適時開示は 6 月 12 日の独立役員届出書の次が 26 日の「事業計画 および成長可能性に関する事項」で、17〜20 日には何も無い。会社のニュースも 6 月 4 日の PolySphere-3 の次が 7 月 15 日の GENIAC 採択になる。6 月 4 日から 17 日までの株価は 2,991 円から 3,040 円で、ほとんど動いていない。

材料は市場の側にあった。株探は 6 月 18 日の引け後に「『AI エージェント』爆騰の宴が始まる」と 書いている。米アマゾンの CEO が AI エージェントの導入で管理部門の人員削減に触れたことを挙げ、 AI エージェントを「にわかにテーマ性を帯びてきた」と紹介した。その筆頭が AI inside で、理由は 「AI エージェントの標準搭載に舵を切っており、同分野のフロントランナー」。19 日の記事も ストップ高の理由を「AI エージェント注力で新たな成長シナリオ」としている。

同じ記事が挙げた「AI エージェント関連」を並べると、テーマの順番が見える。騰落は%。

コード 銘柄 6/12 → 6/17 6/17 → 6/20 6/20 → 7/31
6580 ライトアップ +24.8 +4.8 +12.7
6562 ジーニー +20.2 -2.8 -14.3
4382 HEROZ +11.1 -4.5 -13.7
4488 AI inside -1.8 +57.1 -14.8
4011 ヘッドウォータース -1.2 +17.7 -1.0
6182 メタリアル -2.5 +5.0 -9.4
6572 オープングループ -1.5 +3.4 +16.1
4259 エクサウィザーズ -4.9 -2.8 -2.0
— 全市場の中央値 -0.1 +4.3

先に動いたのはライトアップとジーニーで、どちらも同じ週に自社の AI エージェントを発表している (株探の週間まとめ)。AI inside は材料の無いまま 18 日から加わり、テーマの中で最も大きく 上げた。

AI エージェントの標準搭載は、会社が 2025 年 5 月 13 日にすでに発表していた。その日の終値は 3,140 円で、株価は反応していない。1 か月前の発表が、テーマに火が付いてから値付けされた形に なる。

上げは続かなかった。7 月 31 日までに 20 日の終値から 14.8% 下げ、全市場の中央値 (+4.3%) を 大きく下回った。その後も 2026 年 6 月の 1,942 円まで下げ続けている。浮動株が少なく出来高の 薄い株に、テーマの資金が一時に入った動きと読める。

株主は創業者が半分を持つ

最新の有報から上位 10 名。

順 株主 比率
1 渡久地 択 47.26%
2 上田八木短資 4.51%
3 中沖 勝明 2.82%
4 大日本印刷 2.51%
5 楽天証券 1.79%
6 松井証券 1.38%
7 福田 久也 1.25%
8 SBI証券 1.01%
9 倉員 伸夫 0.87%
10 日本カストディ銀行(信託口) 0.76%

上位 10 名で 64.2%。1 位は代表取締役の渡久地氏で、単独で 47.26% を持つ。過半に近いオーナー 企業になる。 信託口は 0.76% しかなく、機関投資家はほとんど入っていない。ネット証券が 3 社並ぶ のは、個人の保有が多いことを示す。

浮動株が少なく個人が多い構成は、出来高の薄さと、2024 年や 2025 年 6 月の値の飛び方と合う。

渡久地 択は、20 代で起業を重ねた創業者

1984 年生まれの 42 歳。愛知県出身で、高校を出て大学を 1 年で中退し、2004 年から人工知能の研究 開発を始めたとされる (Wikipedia)。有報の略歴では、2010 年から 2015 年までの 5 年間に 7 つの会社と 法人を立ち上げている。グルメサイトなどで、AI の研究の資金を作るための会社だったという。 2015 年 8 月に AI inside を設立し、2019 年 12 月に 35 歳でマザーズに上場した。

年 出来事
2010〜2014 socialwave、IQUE、SPACEBOY、think apartment、データサイエンス総合研究所などを設立
2015-08 AI inside を設立。同じ頃に資産管理会社の Toguchi Estate も
2019-12 東証マザーズに上場
2021-04 NTT 西日本の不更新を開示。2 日続けてストップ安
2022-05 aiforce solutions を買収。2025/3 期にのれん 6.85 億円を減損
2023-02〜2025-06 外部から COO と CFO を迎え、2025 年 6 月に 2 人とも取締役に

持株は 1,882,368 株で 47.26%。2025 年の有報の 47.23% からほとんど動いておらず、売っていない。 2026-09-25 の終値で評価すると約 40 億円になる。2022/3 期の最高値 38,950 円なら約 730 億円だった (同じ株数で置いた試算)。

経営の形は、この 2 年で創業者 1 人の会社から変わりつつある。Q1 の決算説明資料の経営メンバーは、 COO が外資系 IT、CFO が自動車メーカーと日用品大手の経理財務の出身。事業部長 2 人は日本 マイクロソフトのパートナー営業とクラウド営業の出身で、2025 年 4 月に執行役員になった。パートナー 経由で売る会社が、パートナー営業の専門家を入れた形になる。

取締役の個人別の報酬は、取締役会が社長に一任している。社外を除く取締役 6 人の報酬は合計 1.25 億円で、うち株式報酬が 0.56 億円。報酬の半分以上を株式にする方針を有報に書いている。

読みとしては、技術の人で、構想が大きい。 決算説明資料の市場認識は「AI の性能が 3 年で 1,000 倍」から始まり、Sovereign Grid は「30 社で 1,000 億円規模」を語る。一方で、NTT 西日本の件は パートナー経由の契約の質を見ていなかった失敗で、aiforce の買収は減損に終わった。構想を数字に 落とす役を、外から来た COO と CFO がどこまで担えるかが、この会社を見る軸になる。

出し方

  • 通期の実績 (2021/3〜2026/3 期) は、2026-06-25 と 2025-06-26 に提出された有価証券報告書。 2021/3〜2023/3 期は「主要な経営指標等」、2024/3〜2026/3 期は損益計算書と貸借対照表
  • 第 1 四半期の実績、前年同期、損益計算書、貸借対照表は、2026-08-12 開示の 2027/3 期 第 1 四半期 決算短信
  • 会社予想は同じ第 1 四半期決算短信の表紙にある通期予想。2026-05-13 開示の本決算短信から 据え置かれている。予想 EPS と発行済株式数、自己株式数も同じ表紙から取った
  • 増減の理由、リカーリング型の内訳、ライセンス数、補助金、のれんは、2026-08-12 の第 1 四半期 決算短信、2026-05-13 の 2026/3 期決算短信、2025-05-13 の 2025/3 期決算短信の添付資料 「経営成績等の概況」
  • 前年の Q1 進捗は、2025-08-12 開示の 2026/3 期 第 1 四半期決算短信の実績を 2026/3 期の通期実績で 割った
  • 新事業の中身は、2026/3 期 有価証券報告書の「事業の内容」と、上に挙げた発表と記事。他社の 製品は、上に挙げた 3 つの発表だけを確かめた。国内の類似事業を網羅してはいない。発表は開いて中身を 確かめた
  • 販売経路別の売上と 2027/3 期末の契約数の計画は、2026-05-13 開示の 2026/3 期 決算説明資料。 四半期ごとの契約数、Lite の解約と新規受注、料金表は、2026-08-12 開示の 2027/3 期 第 1 四半期 決算説明資料
  • 主要な顧客は 2026/3 期と 2025/3 期の有価証券報告書のセグメント情報「主要な顧客ごとの情報」、 売掛金の相手先は両期の「主な資産及び負債の内容」
  • 株主は 2026-06-25 提出の 2026/3 期 有価証券報告書の「大株主の状況」。社長の略歴、持株、 取締役の報酬は同じ有報の「役員の状況」と「役員の報酬等」。経営メンバーの経歴とパートナー数は 2027/3 期 第 1 四半期の決算説明資料
  • 2025 年 6 月の急騰の材料は、適時開示と会社のニュースの一覧を 6 月の分だけ確かめた。テーマの 説明は株探の記事で、開いて中身を確かめた。アマゾンの件は記事の記述で、元の発言には当たっていない
  • 株価は東証の日々の終値・出来高。調べた期間に株式分割は無い。同業との比較は株式分割を調整した 終値で出した。市場の中央値は、起点と終点の両日に値が付いた東証の上場銘柄から出した。同業は 社名や事業から AI を主業とする銘柄を選んだ。網羅はしていない

営業利益率、進捗率、前年比、時価総額、PER、PBR は、上の値から割っただけになる。

未確定

  • NTT 西日本経由の Lite 契約が、今どれだけ残っているか。今期の Lite の値上げで解約が出たのと 同じプランで、OEM の契約の質を今は見えるようにしているかは確かめていない
  • 2025 年 6 月のテーマ買いで入った資金が、どこで抜けたか。7 月末までに 15% 戻したが、出来高の 推移で買った層の平均コストを追えば、その後の上値の重さを説明できるかもしれない
  • 2024 年 3 月からの下げが同業より深い理由。 利益率の低下が重なった可能性は書いたが、 下げの時期と決算の日付を突き合わせていない
  • Q1 の売上原価の減少 (労務費・外注費) が続くものか。人員を販管費側に移しただけなら、全体の 費用は減っていない。有報の従業員数と、研究開発費の推移で確かめられる
  • 契約数の計画 3,895 件に届くか。 残り 3 四半期で +759 件が要る。第 2 四半期の決算説明資料 (11 月) で Lite の解約が止まったか、純増が四半期 +250 件の水準に乗ったかを見る
  • Lite の値上げ幅。料金表の 40,000 円は確かめたが、旧料金は会社の案内を開けず確かめていない。 パートナー経由の料金にどう反映されたかも分からない
  • Leapnet の売上と有償の契約数。会社は開示していない。決算説明資料で KPI が出始めるかを見る
  • Cube Atlas 192x の価格、出荷時期、受注件数。Sovereign Grid に第 1 号のアイネット以外が加わるか
  • Sovereign Grid の収益の分け方と、Cube を誰が持つか。 AI inside が持つなら設備投資が要り、 DC 側が買うならハードの売上になる。参加パートナーの発表 (2026 年内の予定) と一緒に出るかを見る
  • 海外に同じ型 (他社の DC に自社の推論機を置いて束ねる) の事業があるか。今回は国内だけ当たった
  • 当社販売の +2.4 億円のうち、Cube と Leapnet の分がいくらか
  • リコーや TOPPAN のように自社の AI を持ち始めたパートナーが、DX Suite の販売を続けるか。 売掛金の相手先を毎年の有報で追う
  • 汎用の LLM (画像の書類を直接読めるモデル) と比べた読み取り精度の差が、どこまで保てるか。 差が縮めば、事務機の会社が自前で作る理由も、顧客が汎用モデルで済ませる理由も強まる。 会社は PolySphere-4 の導入後に非定型帳票の読み取りが前年の 405% に増えたと説明しており、 今のところ使われ方は減っていない
  • 橋本グループとの実証で何を作り、有償の契約に進むか。焼津モデルで橋本側が Cube を置いて地域の 会社に AI を貸す形になるか
  • 補助金収入 1.85 億円の中身と、続くかどうか