ABEJA (5574) — フィジカル AI はまだ研究の段階にある AI 導入の会社
稼いでいるのは企業の AI 導入と運用で、ロボットではない。フィジカル AI は、AI ロボット協会を通じた国のデータ基盤の研究と、ロボット基盤モデルの評価・検証の段階にある。2025/8 期の研究開発費は全体で 0.66 億円だった。本業は伸びていて、2026/8 期の会社予想は売上 +26.9%、営業利益 +59%。予想は期中に 2 度上げた。第 3 四半期までの純利益 +102% は繰延税金資産の計上 (税金 -1.3 億円) によるもので、営業の伸びは +41.9%。売上の 3 割は 2 社 (さくらインターネット 17.2%、SOMPO 12.9%) で、SOMPO は 17% を持つ株主でもある。株価は 6 月の安値 2,072 円から 55% 上げて、250 営業日の高値圏にいる。同じ期間のグロースの情報・通信業の中央値は +13%。
企業の AI 導入を請け負い、そのまま運用まで引き受ける会社。中核は自社の「ABEJA Platform」。 東証グロース、情報・通信業。決算期は 8 月で、非連結。エンタープライズプラットフォーム事業の 単一セグメントなので、セグメント情報は無い。
フィジカル AI の地図 ではモデル・データの工程に置き、 薄い工程で唯一足切りを通った小型株として候補に選んだ。調べてみると、フィジカル AI は売上の 外にある。
指標 (2026-09-25 時点)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 市場 | 東証グロース |
| 業種 | 情報・通信業 |
| 株価 | 3,210 円 |
| 時価総額 | 320 億円 |
| 予想 PER | 37.4 倍 |
| 予想 PER (税効果を除いた試算) | 約 63 倍 |
| PBR | 6.05 倍 |
| 予想 ROE | 16.1% |
| 予想 ROE (税効果を除いた試算) | 約 9.6% |
| 配当利回り (予想) | 無配 |
| 自己資本比率 | 89.5% |
| 手元資金の純額 | 43 億円 (時価総額の 13.4%) |
| 250 営業日の高値比 | 96% |
会社予想の純利益 8.52 億円は、繰延税金資産の計上で税金が減った分を含む (第 3 四半期の節)。 そこで、予想の経常利益 7.25 億円に税率 30% を置いた純利益約 5.1 億円でも出した (試算)。 来期以降の実力に近いのはこちらで、PER は 60 倍台になる。借入金は無い。
売上は 3 年で倍、利益率は 10% 台に乗った
| 期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021/8 | 12.59 | — | -2.60 | -3.50 | — |
| 2022/8 | 19.78 | — | -1.82 | -1.96 | — |
| 2023/8 | 27.75 | — | 3.80 | 4.22 | — |
| 2024/8 | 27.66 | 2.90 | 2.87 | 2.19 | 10.5% |
| 2025/8 | 35.85 | 4.46 | 4.52 | 4.48 | 12.4% |
| 2026/8 予想 | 45.50 | 7.10 | 7.25 | 8.52 | 15.6% |
単位は億円。2023/8 期までの営業利益が空いているのは欠損ではない。有報の「主要な経営指標等」に 営業利益が載らないため、当期と前期しか遡れない。
2023/8 期に黒字へ転じ、2024/8 期に 1 年足踏みし、2025/8 期から再び伸びている。会社予想の 2026/8 期は売上 +26.9%、営業利益 +59% で、利益率は 15.6% になる。
予想は期中に 2 度上げた。
| 開示日 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 2025-10-15 (期初) | 44.00 | 5.00 | 4.39 |
| 2026-04-14 (中間期) | 45.00 | 6.00 | 5.40 |
| 2026-07-15 (第 3 四半期) | 45.50 | 7.10 | 8.52 |
単位は億円。売上はほとんど動かさず、利益を上げている。7 月の純利益の上げ幅が大きいのは、 次の節の税金による。
| 期末 | 総資産 | 純資産 |
|---|---|---|
| 2024/8 | 42.40 | 38.98 |
| 2025/8 | 53.18 | 44.72 |
2026 年 5 月末の現預金は 43.0 億円、純資産は 52.9 億円、負債は 6.2 億円。
第 3 四半期までは営業 +42%、純利益の倍増は税金による
2026/8 期の第 3 四半期累計 (2025-09-01 〜 2026-05-31)。
| 項目 | 通期予想 | Q3 累計 | 進捗 | 前年同期 | 前年比 | 前年の Q3 進捗 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45.50 | 33.69 | 74.0% | 26.93 | +25.1% | 75.1% |
| 営業利益 | 7.10 | 5.67 | 79.9% | 4.00 | +41.9% | 89.7% |
| 経常利益 | 7.25 | 5.82 | 80.3% | 4.02 | +44.8% | 88.9% |
| 純利益 | 8.52 | 7.14 | 83.7% | 3.54 | +101.8% | 79.0% |
単位は億円。前年の Q3 進捗は、2025/8 期の Q3 累計を同期の通期実績で割ったもの。
純利益の +101.8% は営業の伸びではない。第 3 四半期末に繰延税金資産の回収可能性を見直し、 法人税等が -1.31 億円 (前年同期は +0.49 億円) になった。税引前では +44.8% で、営業の伸びと揃う。 会社予想の純利益 8.52 億円が経常利益 7.25 億円を上回るのも、この税金による。来期にはこの 上乗せが無い。
四半期ごとに切るとこうなる。
| 四半期 | 2025/8 期 売上 | 営業利益 | 2026/8 期 売上 | 営業利益 |
|---|---|---|---|---|
| Q1 (9〜11 月) | 7.69 | 0.95 | 11.99 | 2.19 |
| Q2 (12〜2 月) | 10.39 | 1.95 | 11.52 | 1.66 |
| Q3 (3〜5 月) | 8.85 | 1.10 | 10.18 | 1.82 |
| Q4 (6〜8 月) | 8.92 | 0.46 | 11.81 | 1.43 |
単位は億円。2026/8 期の Q4 は通期予想から Q3 累計を引いた残り。累計の差分から出した。
売上は四半期で 10〜12 億円の横ばいに入っている。 前年比の +25% は、Q1 の 7.69 → 11.99 億円の 跳ねが大半を作っている。Q2 と Q3 は前年比 +11%、+15% に落ちた。会社は中間期に、Q2 が Q1 より 落ち着いて見えるのは「案件進行タイミング等の影響」と説明している。
売上総利益率は 62.6% → 60.0% (Q3 累計) と下がった。会社は中間期に「戦略的案件や原価側の リソース増強」によると書く。それでも営業利益が売上より伸びたのは、販管費が +13.2% に とどまったためになる。
売るのは AI の導入と運用で、売上の 3 割は 2 社
会社は売上を 2 つに分けて開示している。
| 領域 | 何か | 2025/8 期 | 2026/8 期 Q3 累計 |
|---|---|---|---|
| トランスフォーメーション | ABEJA Platform の導入支援。多くは都度契約 | 27.47 (76.6%) | 25.18 (74.8%) |
| オペレーション | 導入した仕組みを人と AI で運用する。継続収入 | 8.39 (23.4%) | 8.51 (25.2%) |
単位は億円。オペレーション領域は、9 か月で前期の 1 年分を超えた。継続収入の比率は少しずつ 上がっている。ただし 4 分の 3 はまだ都度の導入案件で、四半期の売上が案件の進み方で揺れる 理由もここにある。
2025/8 期の有報で、売上の 10% を超えた相手は 2 社。
| 相手先 | 2024/8 期 | 比率 | 2025/8 期 | 比率 |
|---|---|---|---|---|
| さくらインターネット | — | — | 6.15 | 17.2% |
| SOMPO ホールディングス | 5.65 | 20.4% | 4.62 | 12.9% |
| 味の素 | 3.11 | 11.3% | — | — |
単位は億円。「—」は 10% 未満で記載が無いもの。2 社で売上の 30%。2 期で顔ぶれが入れ替わった。 SOMPO ホールディングスは 2021 年 4 月に業務提携を結んだ相手で、子会社の SOMPO Light Vortex が 17% を持つ筆頭株主でもある (株主の節)。
研究開発は国の事業が中心になる。経済産業省の GENIAC (生成 AI 基盤モデルの開発支援) の枠組みで NEDO の事業に第 1 期から第 4 期まで続けて採択され、小型の LLM と AI エージェントを作っている。 公的プロジェクトの助成金の回収が、2025/8 期の営業キャッシュフローを押し上げた。
フィジカル AI は研究と評価の段階にある
有報がフィジカル AI (会社の言葉では「AI ロボティクス」) について書いているのは次のとおり。
- LLM の判断結果を現場のオペレーションに反映・実行する AI ロボティクスを「戦略領域」に置く
- AI ロボット協会 (AIRoA) に正会員として加入し、協会を通じて NEDO の「ロボティクス分野の生成 AI 基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォームに係る開発」に参画している
- 第 3 四半期の短信は、「ロボット基盤モデルの評価・検証等を通じて」技術を蓄積していると書く
ロボットの製品も、ロボット向けの売上も無い。2025/8 期の研究開発費は全体で 0.66 億円で、 売上の 1.8% にあたる。その一部がロボティクスに向いている。
地図で見た「モデルとデータの工程は薄い」を、この会社は裏づけている。国のロボット基盤モデルの データ基盤に上場企業として関わるのは確かだが、稼ぎは企業の AI 導入から出ている。ABEJA を フィジカル AI の銘柄として持つなら、今は本業の AI 導入を買って、フィジカル AI はおまけで 付いてくる形になる。
株価は 6 月の安値から 55% 上げた
2026-09-25 の終値は 3,210 円。時価総額は 320 億円になる (2026/8 期第 3 四半期決算短信の期末 発行済株式数から自己株式を除いた 997 万株)。PER や PBR は冒頭の指標の表にある。
| 年 | 安値 | 高値 |
|---|---|---|
| 2024 | 1,540 | 5,680 |
| 2025 | 1,600 | 4,140 |
| 2026 | 2,072 | 3,345 |
東証の日々の終値。2024 年は 1 月 4 日から。2024-03-05 の 5,680 円が手元のデータの最高値で、 そこから 2026-06-26 の 2,072 円まで 64% 下げた。そこから 2026-09-24 の 3,345 円まで戻し、今は 250 営業日の高値の 96%。1 年前 (2025-09-26) の 3,195 円とほぼ同じ水準にいる。
2026-06-26 → 09-25 の上げ +54.9% は、同じ期間のグロースの情報・通信業の中央値 +13.1% を大きく 上回る。AI の小型株と並べても、PKSHA Technology +25.4%、HEROZ +20.1%、AI inside +3.7% で、 当社より上げたのはダイナミックマッププラットフォーム (+84.2%) だけだった。業種の動きだけでは 説明できない。
決算への反応は素直でない。中間期に予想を上げた 2026-04-14 (引け後) の翌日、株価は 12.9% 下げた (出来高は前日の 3 倍強)。第 3 四半期に予想を再び上げた 07-15 の翌日は +2.0%。上げ始めたのは その後の 7 月下旬からになる。
株主は SOMPO と創業者で 3 割を持つ
2025/8 期の有価証券報告書、大株主の状況。
| 順 | 株主 | 比率 |
|---|---|---|
| 1 | SOMPO Light Vortex | 17.34% |
| 2 | 岡田 陽介 (代表取締役) | 13.09% |
| 3 | ヒューリック | 4.43% |
| 4 | インスパイア・インベストメント | 2.87% |
| 5 | 外木 直樹 (取締役) | 2.52% |
| 6 | 小間 基裕 (取締役) | 1.45% |
| 7 | BANK JULIUS BAER AND CO. LTD. SINGAPORE CLIENTS | 1.12% |
| 8 | TBS イノベーション・パートナーズ 2 号投資事業組合 | 1.06% |
| 9 | 藤井 衛 | 1.02% |
| 10 | 杉山 央 | 0.95% |
上位 10 名で 45.9%。SOMPO Light Vortex は SOMPO ホールディングスの 100% 子会社で、当社の 「その他の関係会社」にあたる。社外取締役を 1 名送っている。有報は、SOMPO の事前承認や事前報告を 要する取引は無いと書く。役員 3 名で 17.1% を持つ。信託口は上位にいない。
出し方
- 指標は 2026-09-25 の終値で出した。時価総額は、直近の決算短信の期末発行済株式数から自己株式を 除いた株数を掛けた。予想 PER は会社予想の 1 株利益、PBR は直近の四半期末の自己資本 (株主資本と 評価・換算差額等の合計)、予想 ROE は会社予想の純利益を同じ自己資本で割った。手元資金の純額は、 直近の四半期末の現金及び預金と短期の有価証券から借入金を引いた (リース債務は含めない)
- ABEJA の税効果を除いた試算は、会社予想の経常利益に税率 30% を置いた。実効税率は開示の数字から 確かめていない
- 業績は各期の有価証券報告書の「主要な経営指標等」と損益計算書。予想の推移は 2025-10-15 開示の 本決算短信、2026-01-14、04-14、07-15 開示の各四半期決算短信
- 第 3 四半期累計の損益、税金、領域別の売上は 2026-07-15 開示の第 3 四半期決算短信。四半期ごとの 数字は各四半期決算短信の累計の差分
- 売上総利益率の説明は 2026-04-14 開示の中間期決算短信の「経営成績の概況」
- 主要な販売先、SOMPO との関係、研究開発費、AI ロボティクスの記述は 2025/8 期の有価証券報告書の 「生産、受注及び販売の実績」「事業等のリスク」「研究開発活動」「事業の内容」
- 株価は東証の日々の終値。この期間に株式分割は無い。業種の中央値は 2026-06-26 と 09-25 の両日に 終値がある東証グロースの情報・通信業 240 銘柄
未確定
- 7 月下旬からの上げの理由。 グロースの情報・通信業の 4 倍の上げで、業種では説明できない。 7-27 (+10.0%)、8-14 (+7.6%)、9-17 (+9.3%) に跳ねている。会社の発表を確かめていない
- 2026/8 期の本決算 (10 月中旬の予定)。 Q4 に予想どおり売上 11.8 億円が出るか。前年の Q4 は 営業利益 0.46 億円と弱かった。来期の予想は、税金の上乗せが消えて純利益が減る形になるはず
- さくらインターネット向けの売上の中身。 2025/8 期に 17.2% の最大の相手になった。GENIAC の 計算資源に関わる取引か、一度きりか。2026/8 期も続いているか
- ロボティクスに使っている研究開発費の額。 全体で 0.66 億円のうちどれだけか。AIRoA の データ基盤の研究で、会社に何が残るか (データの権利、受託収入、モデル)
- 2024 年 3 月の高値 5,680 円。 手元のデータの最高値で、何で付けたかを確かめていない