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フィジカル AI の地図 — AI ロボットを考え、動かし、つなぐ工程

AI ロボットには、動きを学ぶモデルとデータ、ロボットの本体、関節を動かす減速機・モーター、周りを知る部品、現場に入れる SIer とマテハンが要る。成長戦略は AI ロボットで 2040 年に世界シェア 3 割超、20 兆円を掲げ、ロボット基盤モデル、ロボット OEM、重要部品の 3 つを育てると書く。有報を横断すると、日本が厚いのは産業用ロボットの本体と駆動部品で、ヒューマノイド向けの関節やモーターを売り込む部品会社が 10 社近く並ぶ。一方でモデルとデータを持つ上場企業は少なく、小型株は赤字か高値比で落ちた。本体の最大手の安川電機も高値比 59% で線を割る。ロボット株は 2026 年 5〜7 月に高値を付け、そこから 3〜4 割下げている。下げは、AI・半導体株の巻き戻しに巻き込まれたことと、7〜8 月の決算がフィジカル AI の期待を裏づけなかったことの 2 段による。次に企業レポートにする候補は、ハーモニック・ドライブ・システムズ、ファナック、ABEJA。

問い

AI をロボットに載せ、工場や倉庫や建設現場で人の代わりに動かす。フィジカル AI と呼ばれる この流れで、日本の上場企業はどこにいるか。ロボットの頭脳 (モデルとデータ)、体 (本体)、 関節と筋肉 (駆動部品)、目と皮膚 (知覚部品)、現場に入れる役 (SIer) の工程ごとに洗い出す。

日本成長戦略を読んだとき に、ARK と NRI と 国の 3 つがそろって指していたのがフィジカル AI だった。成長戦略は 17 分野の最初に「AI・半導体」 を置き、その先頭の項目が AI ロボットになる。

成長戦略での位置

日本成長戦略 (2026-07-21) は、このテーマを 主に 2 か所で扱っている。

項目 何と書いているか 目標
フィジカル AI (特に AI ロボット) AI ロボットを中心に市場は 2040 年に約 60 兆円との予測。人手不足の解消に役立ち、国内の生産・技術基盤の確保が急務。製造業のデータと産業ロボットの技術基盤を生かし、ロボット・主要部品・AI モデルの開発を進める AI ロボットで 2040 年に世界シェア 3 割超、20 兆円
施策パッケージ「AX の推進」 「AI ロボティクス実装ロードマップ」の下で AI ロボットの導入を促す。現場 (製造・物流・介護・災害・廃炉など) のデータを AI-Ready にしたデータ基盤と、フィジカル AI の開発基盤になるマルチモーダル基盤モデルの開発を進める —

施策は 3 つに分かれる。「国産フィジカル AI モデル開発やデータ整備を通じたロボット基盤モデルの 開発能力強化」「ロボット OEM の育成」「重要部品の設計・製造能力強化」。ロボット OEM を育てると わざわざ書くのは、完成品のロボットを作る会社が足りないと見ているからだと読める。

導入の目標は 18 分野で立てる。製造業 (多品種少量生産)、造船、物流 (倉庫・輸配送)、建設・土木、 建築、インフラ保守、小売、宿泊業、飲食・食品製造業、医療、介護、警備業、農業、林業、廃棄物処理業、 災害対応、警察活動、防衛。導入を進めながらデータを集め、検証、標準化、人材育成をする拠点として、 AI ロボティクスの Center of Excellence を作るとある。

ロボットを動かす半導体 (センサー、マイコン、先端ロジック) は同じ分野の 2 つ目の項目で、 国産 AI ハードウェアの地図 で扱った。この地図では外す。

工程

AI ロボットが現場で動くまでを 5 つに割った。

工程 何をするか
モデル・データ ロボットの動きを学ぶ基盤モデル、学習に使う現場や空間のデータ、シミュレーション、通信
本体 産業用ロボット、協働ロボット、ヒューマノイド、自律移動ロボット
駆動部品 関節を動かす減速機、サーボモーター、アクチュエータ、軸受、ロボットハンド
知覚・配線 3D ビジョン、触覚・力覚センサー、エンコーダ、関節を通る配線
SIer・マテハン ロボットを現場のラインに組み込む。自動倉庫、搬送、ロボットの販売・レンタル

工程ごとの上場企業

各社の最新の有価証券報告書から、「事業の内容」と「事業の状況」に工程ごとの語が出る会社を 拾い、文を読んで工程に割った。時価総額は億円、高値比は直近の終値を 250 営業日の高値で割った もの、営業利益は直近 2 期の通期で億円。太字は下の足切りで落ちた数字。

モデル・データ

コード 銘柄 何を持っているか 時価総額 高値比 営業利益 前期 → 当期
9984 ソフトバンクグループ AI モデル、AI チップ、AI インフラ、フィジカル AI の 4 領域に投資。フィジカル AI を「AI の体」と位置づける 350,492 71% —
6501 日立製作所 「HMAX Industry」。自社製品の設置台数から出るデータと現場の知見にフィジカル AI を掛ける。エッジ AI 半導体の研究開発 247,515 95% —
9434 ソフトバンク エリクソンと組み、AI-RAN でロボットの AI 処理をネットワーク側へ逃がす実証に成功 117,655 98% 9,890.2 → 10,425.8
3741 セック ロボットの部品を部品化する RT ミドルウェア、次世代ロボットの研究開発、エッジ AI 334 79% 17.9 → 18.8
5574 ABEJA AI ロボット協会 (AIRoA) の正会員。NEDO の「ロボティクス分野の生成 AI 基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォーム」に参画 320 91% 2.9 → 4.5
336A ダイナミックマッププラットフォーム 高精度 3 次元地図。フィジカル AI の学習・検証に使う「Data for AI」を掲げる 322 77% -12.2 → -18.8
5885 ジーデップ・アドバンス NVIDIA Omniverse の環境構築とライセンス。フィジカル AI の実証環境の需要が出てきた 174 91% 8.4 → 11.2
4425 Kudan 空間知覚を「フィジカル AI の機械の眼」と位置づける 166 48% -8.0 → -5.9
3853 アステリア フィジカル AI を重点技術に置き、ロボットの製品・部品の輸入まで事業範囲を広げる 189 40% 7.8 → 10.2
4379 Photosynth フィジカル AI へ新規参入。その研究開発費を調整後 EBITDA で足し戻している 78 98% 0.8 → 2.3

ソフトバンクグループと日立製作所は営業利益を開示していないので空けた。当期純利益は ソフトバンクグループが 11,533 → 50,023 億円、日立製作所が 6,157 → 8,024 億円。

本体

コード 銘柄 何を持っているか 時価総額 高値比 営業利益 前期 → 当期
6981 村田製作所 京都ヒューマノイドアソシエーション (KyoHA) を設立し、純国産のヒューマノイドに取り組む。本業は電子部品 146,024 65% 2,797.0 → 2,818.4
6954 ファナック 産業用ロボットと CNC。ロボット分野のフィジカル AI のアプリケーション事例を発表 55,850 71% 1,588.5 → 1,837.6
7012 川崎重工業 産業用ロボット、手術支援ロボット hinotori、配送ロボット。2026 年 5 月にシリコンバレーへ Physical AI Center を開設し、NVIDIA などと協業 20,127 66% —
7272 ヤマハ発動機 産業用ロボットと表面実装機 (ヤマハロボティクス) 17,626 92% 1,815.2 → 1,263.7
6645 オムロン 制御機器事業に産業用ロボット (旧 Adept) を持つ 12,437 90% 534.5 → 599.4
6506 安川電機 自律型 AI ロボット「MOTOMAN NEXT」。進化型アクチュエータなどの基幹部品でヒューマノイドを含むフィジカル AI 市場を開く 11,620 59% 501.6 → 473.1
6724 セイコーエプソン 産業用ロボット。クリーンルームに対応した人協働ロボットでライフサイエンスへ広げる 10,484 99% 751.1 → 495.6
6622 ダイヘン 溶接の協働ロボット、教示のいらない AI 溶接、協働ロボットと搬送台車を一体にした自走ロボット 3,053 66% 161.7 → 187.8
6474 不二越 産業用ロボット。人の接近を検知して止まる協働ロボット「MZS05」 1,201 84% 66.4 → 97.7
6104 芝浦機械 産業用ロボット、サーボモータ、CNC 1,108 95% 141.0 → 43.7
3443 川田テクノロジーズ 子会社カワダロボティクスの双腕ロボット「NEXTAGE」と、人と働くヒューマノイドの開発。本業は橋梁と鉄骨 724 77% 96.8 → 86.0
7779 CYBERDYNE 装着型ロボット HAL。「HCPS 融合サイバニクス with フィジカル AI」を掲げる 505 61% -9.3 → -6.0
6482 YUSHIN 射出成形品の取出ロボット 225 87% 25.9 → 8.3

川崎重工業は営業利益を開示していないので空けた。当期純利益は 880 → 1,082 億円。

ウエハを運ぶ搬送ロボットを作るローツェ (6566 億円、高値比 75%) と平田機工 (1,162 億円、98%) も 有報に語が多く出た。ただ、半導体製造装置の一部なので、この地図の本体からは外した。

駆動部品

コード 銘柄 何を持っているか 時価総額 高値比 営業利益 前期 → 当期
6273 SMC 空気圧機器。産業用ロボットに組み込まれる要素部品 43,769 82% 1,902.4 → 1,905.6
6594 ニデック 減速機事業で、協働ロボット用減速機の開発・生産に注力 32,555 98% 1,618.6 → 2,381.2
6479 ミネベアミツミ ヒューマノイドを先端分野の筆頭に挙げる。ベアリング、モーター 14,437 69% 944.8 → 1,039.8
6448 ブラザー工業 ニッセイ事業で金属製の球状歯車の量産工法を確立。ヒューマノイドの関節に売り込む 11,704 94% 677.0 → 778.7
6481 THK LM ガイド、アクチュエータ。サービスロボット、物流センターの搬送ロボット 7,205 78% 159.2 → 144.4
6302 住友重機械工業 サイクロ減速機、サーボモータ用のギヤヘッド 7,081 95% 551.0 → 514.8
6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ 波動歯車減速機の専業。減速機にモーターとセンサーを組み合わせたアクチュエータ 5,964 71% 0.1 → 25.7
6268 ナブテスコ 産業用ロボットの関節に入る精密減速機 RV。ロボットの在庫調整が終わり増収 5,617 82% 129.3 → 207.3
6471 日本精工 デルタ電子と組み、ヒューマノイド向けのロータリー・リニアアクチュエータを開発。関節の軸受 5,383 78% 284.6 → 388.1
6592 マブチモーター 協調ロボットとヒューマノイド向けに中空構造のブラシレスモーター 4,152 91% 216.4 → 254.7
6516 山洋電気 サーボモータとサーボアンプ。ウエハ搬送ロボット向けが伸びた 1,928 71% 79.4 → 108.9
6209 リケン NPR 小型産業用ロボット向けの樹脂製波動減速機、薄型のギヤードモータ 1,079 88% 118.1 → 128.5
6145 NITTOKU 巻線機。ヒューマノイドの関節や指先向けの小型モーターを作る設備を開発 452 80% 11.2 → 54.4
6433 ヒーハイスト 直動機器と球面軸受。KyoHA に参画 83 59% -1.2 → -2.6
6408 小倉クラッチ 協働ロボット向けの軽量・薄型のブレーキ 66 86% 4.6 → 13.8
6265 コンバム 真空吸着のロボットハンド 51 86% 3.0 → 2.9

THK は当期に最終赤字 (-699 億円) だが、2 期続けてではないので線は割らない。

知覚・配線

コード 銘柄 何を持っているか 時価総額 高値比 営業利益 前期 → 当期
5803 フジクラ ヒューマノイド向けの極細同軸ケーブル。ケーブル型の圧電センサーで触覚センサーの市場を開く。本業はデータセンター向けの光配線 82,576 63% 1,355.2 → 1,887.1
6762 TDK センサーとアクチュエータを戦略成長製品に置き、ヒューマノイドを AI 関連の市場に挙げる 56,527 72% 2,241.9 → 2,724.2
5471 大同特殊鋼 サーボモーターのエンコーダ光源の赤外 LED。協働ロボットとヒューマノイド向けに高分解能化 4,955 84% 394.1 → 420.8
7240 NOK ヒューマノイドを戦略的な新市場に置き、関節を通すフレキシブル配線板を開発 4,878 92% 372.6 → 329.9
3106 倉敷紡績 高速 3D ビジョンセンサー「KURASENSE」と、それを載せた 7 軸協働ロボット「KURAVIZON」 1,849 100% 103.1 → 91.8
7725 インターアクション イメージセンサーの検査。フィジカル AI 向けの ToF センサーと LiDAR 向けイメージセンサーを見込む 184 80% 14.2 → 7.0
3652 ディジタルメディアプロフェッショナル 協働ロボットの目になる Cambrian のビジョンシステムを販売。AMR も 97 81% 2.6 → -3.1

SIer・マテハン

コード 銘柄 何を持っているか 時価総額 高値比 営業利益 前期 → 当期
6383 ダイフク マテハンの専業。ピッキングロボット、自律走行搬送ロボット 20,654 72% 715.5 → 1,008.2
6371 椿本チエイン マテハン事業。物流業界向けが伸びた 2,767 97% 228.5 → 215.8
8051 山善 FA 機器の商社。ヒューマノイドの社会実装を進めるコンソーシアム「J-HRTI」に参画 1,793 99% 95.4 → 120.4
6652 IDEC 安全機器を組み合わせた協働ロボットのシステム 1,134 97% 36.5 → 61.2
8137 サンワテクノス 産業用ロボットとサーボの商社 754 100% 35.1 → 40.6
6144 西部電機 自動倉庫。「ロボティクス・マテハン」を中核に置く 424 84% 31.9 → 42.0
4392 FIG 搬送ロボット。純国産の AGV・AMR メーカーの匠と資本業務提携 333 37% 3.6 → 8.3
7318 セレンディップ・ホールディングス 中堅・中小企業向けに協働ロボットを販売・レンタル 249 55% 7.3 → 21.9
6874 協立電機 制御盤。フィジカル AI を「本命」と呼び、支援ツールや試作機を開発 191 81% 33.5 → 28.5
6224 JRC ロボット SI カンパニー。パラレルリンクロボットの SI 事業を譲り受けた 157 67% 13.8 → 19.6
3444 菊池製作所 マッスルスーツ、配送ロボット。ロボットのスタートアップの受託開発・製造 129 63% -5.2 → -2.5
1401 エムビーエス ドーナッツロボティクス (非上場) と資本業務提携し、ヒューマノイドの建築業界での独占販売代理店になる 100 87% 6.3 → 7.2
5597 ブルーイノベーション ドローンや AGV を遠隔で統合管理する「Blue Earth Platform」 56 52% -4.0 → -5.5
6663 太洋テクノレックス 産業用ロボットのシステムインテグレーション 18 69% -0.5 → 1.4

足切り

バックテストのまとめ で残った「高値から遠い銘柄は さらに下がる」と、赤字の線を使った。先の 2 本の地図と同じ線になる。

  • 高値比が 60% 未満 (250 営業日の高値から 4 割以上下げている)
  • 直近の通期が営業赤字、または 2 期続けて最終赤字

60% の線は置いたもので、検証してはいない。

落ちたのは 11 社。安川電機、ヒーハイスト、CYBERDYNE、ディジタルメディアプロフェッショナル、 ダイナミックマッププラットフォーム、Kudan、アステリア、FIG、セレンディップ・ホールディングス、 ブルーイノベーション、菊池製作所。表の太字が落ちた理由になる。

読み

日本が厚いのは本体と駆動部品で、頭脳の側は薄い。 本体の表には産業用ロボットの大手が 並び、駆動部品の表は 16 社になった。成長戦略が「製造業の豊富なデータや産業ロボット等の技術 基盤をいかし」と書くとおりの並びになる。一方で、ロボットの動きを学ぶ基盤モデルを自社で 持つ上場企業は見当たらなかった。モデル・データの表は、投資する会社 (ソフトバンクグループ)、 自社製品のデータを持つ会社 (日立)、協会に参加する会社 (ABEJA) で、モデルを作る会社ではない。 国が「国産フィジカル AI モデル開発」を施策の先頭に書くのは、この薄さの裏返しに見える。

ヒューマノイドは、部品会社の売り込み先として有報に出てくる。 日本精工、マブチモーター、 ブラザー工業、NITTOKU、フジクラ、NOK、大同特殊鋼、TDK、ミネベアミツミが、ヒューマノイド 向けの関節、モーター、配線、センサーを「新市場」「戦略的新市場開拓領域」と書いていた。 本体を作ると書いたのは、KyoHA の村田製作所とカワダロボティクスくらいになる。部品の側は、 どの国のヒューマノイドが勝っても売れる。AI ハードウェアの地図で後工程が設計より賭けが 小さかったのと、同じ形をしている。

本体の最大手が足切りで落ちた。 安川電機は高値比 59% で線を割った。株価は 2026-06-22 に 高値を付け、そこから 4 割下げている。ファナック (71%)、ハーモニック・ドライブ・システムズ (71%) も 2026 年 5〜7 月に高値を付けて 3 割前後下げた。1 年前と比べるとどれもまだ上にいて、 ハーモニックは 2,690 円から 8,890 円まで上がって 6,300 円にいる。ロボット株はこの夏に一度 大きく買われ、いまは冷めている途中にある。下げの理由は次の節で調べた。

モデルとデータの小型株は、そろって落ちた。 Kudan、ダイナミックマッププラットフォーム、 アステリアはフィジカル AI を正面から掲げるが、赤字か高値比で落ちた。残った小型株は ABEJA と Photosynth で、どちらもフィジカル AI は新規事業の段階にある。語りの熱と稼ぎの間に距離がある 工程になる。

ヒューマノイドは、協会とコンソーシアムで束ねる形で動き始めた。 村田製作所が設立した KyoHA にヒーハイストが参画し、山善は J-HRTI に、ABEJA は AIRoA に入っている。エムビーエスは 非上場のドーナッツロボティクスから建築業界での独占販売権を得た。どれも 2025 年以降の動きで、 売上にはまだ出ていない。

ロボット株が下げた理由

2026-09-29 に調べた。下げは 2 段に分かれる。 6 月下旬から 7 月末は、AI・半導体株の 巻き戻しにロボット株が同じ日に巻き込まれた。7〜8 月の決算では、フィジカル AI で買われた会社が 決算の翌日に 1 割以上下げた。AI・半導体株は決算のあとに戻ったが、ロボット株は戻らなかった。

週末 ロボット株 AI・半導体株 銀行株 プライム全体
2026-04-24 +12% +30% -1% -3%
2026-05-15 +42% +27% +8% -1%
2026-06-19 +48% +71% +11% -2%
2026-07-03 +38% +58% +21% +1%
2026-07-17 +16% +33% +17% +1%
2026-07-31 +16% +42% +21% +3%
2026-08-21 +11% +41% +29% +6%
2026-09-25 +12% +42% +41% +6%

2026-03-27 の終値からの騰落の中央値。ロボット株は地図に載せた本体と駆動部品の 12 社、AI・半導体株は 8 社 (銘柄は出し方の節)。

4 月から 6 月の上げは、ロボット株だけのものではなかった。同じ期間 (04-01 → 06-22) にプライムの 電気機器の中央値は +22.7%、プライム全体は -1.6% だった。AI・半導体と電子部品に資金が集まり、 ロボット株もその一部として買われた。村田製作所は 04-01 から高値まで 3.3 倍、TDK と東京エレクトロンは 2 倍になっている。高値の日も揃っていて、安川電機、村田製作所、TDK、レーザーテックが 2026-06-22、 東京エレクトロンが 07-01、ハーモニックとナブテスコが 07-06 だった。

1 段目は、AI・半導体の巻き戻し。 日経平均が 2,500 円を超えて下げた日が 3 回あり、どれも AI・半導体株が主役で、ロボット株は同じ日に同じ向きで下げた。

日付 日経平均 何と報じられたか 安川電機 ファナック ハーモニック ナブテスコ
2026-06-23 -2,565 円 AI・半導体株が総崩れ。9 営業日ぶりの反落で「我先にの利食い」。韓国株の大幅安が拍車 -6.5% -6.3% -11.6% -9.7%
2026-07-17 -2,694 円 AI 需要や収益性を確かめたいとのムードで資金が逆流。個人の信用買いの投げ売り -6.9% -5.5% -10.1% -7.8%
2026-07-28 -2,566 円 前日の米国の半導体株安と韓国株の急落。中国企業との競争激化の懸念で半導体装置株が売られた -9.5% -6.1% -12.3% -9.8%

騰落は前営業日の終値との比。プライム全体の中央値は 3 日とも -1% 前後で、下げは AI・半導体と その周りに集中した。

抜けた資金の行き先の 1 つは銀行株になる。プライムの銀行業の中央値は 06-22 → 09-25 で +26.4%、 同じ期間に電気機器は -4.7%、プライム全体は +7.0%。日経は 7 月末に、日本の銀行株の上昇率が世界で 突出し、下げの速い AI・半導体株からの「雨宿り」先になっていると報じた。背景には日銀の利上げの 継続がある。

2 段目は、ロボット各社の決算。 7 月から 8 月の四半期決算で、翌営業日の値動きが二手に 分かれた。

会社 開示日 翌営業日 プライム全体
安川電機 2026-07-10 -14.3% -0.4%
ファナック 2026-07-31 -14.3% -0.8%
ミネベアミツミ 2026-08-05 -8.8% +0.9%
NITTOKU 2026-08-07 -15.4% +0.4%
ハーモニック・ドライブ・システムズ 2026-08-07 -10.9% +0.4%
ナブテスコ 2026-07-31 +1.6% -0.8%
THK 2026-08-05 +1.8% +0.9%
日本精工 2026-07-30 +1.9% -0.7%

どれも引け後の開示で、騰落は翌営業日の前日比。大きく下げた 5 社は、ヒューマノイドの関節や モーター、フィジカル AI の中核として語られ、4 月から高値までの上げが大きかった側になる (ハーモニック 2.4 倍、ミネベアミツミ 2 倍、安川電機 +77%)。平らだった側は、精密減速機、直動、 軸受のように既存の産業用ロボットの部品を売る会社だった。

安川電機は、基幹システムの移行で生産に遅れが出た。3〜5 月期は売上収益 +10.6% に対し営業利益が 105.0 → 84.9 億円 (-19%) に減り、株価はストップ安になった。日経は「フィジカル AI 期待に冷や水」と 書いた。ファナックとハーモニックは予想を上げたのに下げた。ファナックは実績が「物足りない」と 受け止められ、同じ日に日米の為替介入で円高が進んだ。ハーモニックは予想の営業利益を 37% 上げたが、 増益を引いたのは手術支援ロボットと半導体向けで、AI ロボットではなかった (企業レポート)。

決算が明暗を分けた。 AI・半導体株は 7 月末の底から決算で戻し、9 月末に 3 月末比 +42% を 保っている。ロボット株は +16% から +12% へさらに削れた。半導体は受注と利益が伸びを裏づけた。 ロボットは、フィジカル AI の期待で買われた分を、四半期の数字が裏づけなかった。ハーモニックが 5 月に「AI ロボットの社会実装が想定より遅い」と中期計画を 4 年延ばしたのは、この流れの先取りに なっていた。

したがって、今の高値比の低さは、ロボットの需要が崩れたことを意味しない。受注はファナックが +11.0% (2026/3 期)、ハーモニックが第 1 四半期に +55.7%、安川電機も堅調と書いている。落ちたのは、 フィジカル AI が近いうちに売上になるという期待の値段になる。

次に企業レポートにする候補

足切りを通り、工程の中で事業の純度が高い会社から 3 つ選んだ。

コード 銘柄 工程 選んだ理由
6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ 駆動部品 減速機の専業で、ヒューマノイドの関節に最も近い。営業利益が 0.1 → 25.7 億円と底から戻り、株価は 1 年で 3 倍を超えたあと 3 割下げた
6954 ファナック 本体 安川電機が落ちたなかで、本体の最大手で足切りを通った。フィジカル AI のアプリケーション事例を出している
5574 ABEJA モデル・データ 薄い工程で唯一足切りを通った小型株。AIRoA 経由で国のロボット基盤モデルのデータ基盤に参画している

次点は、ヒューマノイド向けのモーター設備で営業利益が 5 倍になった NITTOKU と、3D ビジョンと 協働ロボットを 1 社で持つ倉敷紡績。

出し方

  • 母集団は、2025-06-01 以降に提出された各社の最新の有価証券報告書 3,934 社。「企業の概況」と 「事業の状況」の本文を読み、工程ごとの語 (フィジカル AI、ロボット基盤モデル、世界モデル、 模倣学習、Omniverse、産業用ロボット、協働ロボット、ヒューマノイド、人型ロボット、AMR、 減速機、波動歯車、サーボモータ、アクチュエータ、ロボットハンド、力覚センサ、触覚センサ、 3D ビジョン、LiDAR、エンコーダ、ロボット SIer、自動倉庫、マテハン、MUJIN、AIRoA、KyoHA など) の出現を数えた。何か 1 つでも出たのは 359 社
  • 出た工程の数と回数、「ロボット」の出現回数で並べ、上位からおよそ 95 社の文を読んで、 ロボットに部品や製品を出す側かどうかを判断した。語が別の意味で出た会社 (音声符号化の AMR、 バルブのアクチュエータ、車載の LiDAR だけの会社など) は外した。読んでいない会社がある。 「ヒューマノイド」「人型ロボット」の語は 359 社すべてで文を確かめた
  • 時価総額は 2026-09-25 の終値と、直近の決算短信の表紙にある期末の発行済株式数 (自己株式を 除く) から出した。高値比は東証の日々の終値 (株式分割を調整した値) で、直近 250 営業日の 高値に対する比
  • 営業利益は有価証券報告書と決算短信の通期の実績。決算期は会社ごとに違う
  • 成長戦略の項目は、内閣官房の日本成長戦略 (2026-07-21) の本文「フィジカル AI (特に AI ロボット)」 と、施策パッケージ「あらゆる分野の産業競争力強化の鍵となる AX の推進」から引いた
  • ロボット株の下げは、地図の本体と駆動部品から 12 社 (ファナック、安川電機、ハーモニック・ドライブ・ システムズ、ナブテスコ、SMC、ミネベアミツミ、日本精工、THK、ダイヘン、ダイフク、NITTOKU、山洋電気) の 中央値で見た。AI・半導体株は村田製作所、TDK、フジクラ、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、 ソシオネクスト、キオクシアホールディングスの 8 社。銀行株は東証プライムの銀行業の中央値、プライム全体は東証プライムの全銘柄の中央値。 どれも東証の日々の終値 (株式分割を調整した値)。日経平均の下げ幅と、その日の理由は日経の記事を開いて確かめた
  • 決算の翌営業日の騰落は、各社の 2026 年 7〜8 月開示の四半期決算短信の開示時刻から翌営業日を決めた。 安川電機の 3〜5 月期の数字は 2026-07-10 開示の第 1 四半期決算短信

未確定

  • ロボット株が戻るきっかけ。 下げの理由は「ロボット株が下げた理由」の節で分かった。残るのは、 期待の値段が剥げたあと、何が出れば買い戻されるか。AI ロボット向けの受注額を会社が数字で出すこと、 ヒューマノイドの量産の報せが候補になる。どれも時期は見えていない
  • 4〜6 月の上げの起点。 AI・半導体と電子部品に資金が集まった理由 (メモリー価格、米国の AI 投資など) は 調べていない。ロボット株はその一部として買われた、までしか確かめていない
  • キーエンス、トヨタ自動車、ソニーグループ、デンソー。 キーエンスとトヨタとソニーは 有報の本文に拾える文が無く、デンソーはフィジカル AI を自社の生産の自動化として書くだけだった。 デンソーウェーブの産業用ロボットや、トヨタとソニーのロボットの研究は、この地図に入っていない
  • 非上場の会社は地図の外にある。MUJIN (ファーストリテイリングの物流の提携先)、Preferred Robotics (三菱電機との搬送の協業)、ドーナッツロボティクス、テレイグジスタンス。上場企業の 有報に提携先としてだけ現れる
  • KyoHA、J-HRTI、AIRoA の参加企業の全体。有報に書いた会社しか拾えていない
  • 工程ごとの売上の規模。ロボット向けの売上をセグメントで分けている会社は少なく、純度は有報の 書きぶりから判断した。ヒューマノイド向けの部品は、どの会社も売上に出る段階にない
  • 「AI ロボティクス実装ロードマップ」の中身 (18 分野ごとの導入目標と支援策)。今回は読んでいない
  • 足切りの線 (高値比 60%) を検証していない

この地図から辿った企業