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ファナック (6954) — 利幅を上げ続けるロボットの最大手

売上は 3 期で年 0〜8% の伸びだが、営業利益率は 17.8% → 19.9% → 21.4% と上がり、会社予想の 2027/3 期は 23.0%。売上の 44% がロボットで、伸びを引いているのは中国の EV と一般産業になる。中国のロボットの販売会社 (持分 50%) は 2026/3 期に売上の 10.4% を占める最大の売り先になり、第 1 四半期は持分法の利益が +70% で経常利益を押し上げた。フィジカル AI は、ROS 2 と Python への対応でロボットを外の AI に開き、NVIDIA、Google、富士通と組む形を取る。基盤モデルは自前で持たない。株価は 2026-05-25 の高値 8,428 円から 29% 下げた。第 1 四半期に予想を上げた翌営業日に 14.3% 下げ、日経は実績が「物足りない」と受け止められたと報じた。予想 PER は約 28 倍、PBR は 3.0 倍。時価総額の 14% が手元資金で、借入金は無い。

CNC (工作機械の数値制御装置) と産業用ロボットの会社。東証プライム、電気機器。決算期は 3 月。 事業は単一で、部門を FA (CNC とサーボ)、ロボット、ロボマシン (小型切削加工機・射出成形機・ ワイヤ放電加工機)、サービスの 4 つに分けて売上を開示している。

フィジカル AI の地図 では本体の工程に置いた。安川電機が 高値比で足切りに落ちたなかで、本体の最大手として残った会社になる。

指標 (2026-09-25 時点)

項目 値
市場 東証プライム
業種 電気機器
株価 5,985 円
時価総額 55,850 億円
予想 PER 28.2 倍
PBR 2.95 倍
予想 ROE 10.5%
配当利回り (実績) 1.79% (年 107.09 円)
自己資本比率 89.7%
手元資金の純額 7,623 億円 (時価総額の 13.6%)
250 営業日の高値比 71%

配当は予想を出していないので、2026/3 期の実績で割った。1 株利益 178.47 円に対して配当性向は 60% になる。時価総額の 14% が現金と短期の有価証券で、借入金は無い。予想 ROE が 10% 台に とどまるのは利幅の低さではなく、自己資本比率 9 割の厚い資本のためになる。

売上の伸びは緩いが、利幅は 3 期続けて上がった

期 売上高 営業利益 経常利益 純利益 営業利益率
2021/3 5,512.87 — 1,287.44 940.12 —
2022/3 7,330.08 — 2,133.95 1,552.73 —
2023/3 8,519.56 — 2,313.27 1,705.87 —
2024/3 7,952.74 1,419.19 1,817.55 1,331.59 17.8%
2025/3 7,971.29 1,588.46 1,967.38 1,475.57 19.9%
2026/3 8,578.31 1,837.63 2,274.85 1,665.43 21.4%
2027/3 予想 9,481.00 2,180.00 2,712.00 1,980.00 23.0%

単位は億円。2023/3 期までの営業利益が空いているのは欠損ではない。有報の「主要な経営指標等」に 営業利益が載らないため、当期と前期しか遡れない。

売上は 2023/3 期の 8,520 億円を 2026/3 期にようやく超えた。3 期で見ると年 0〜8% の伸びになる。 一方で営業利益率は 17.8% → 19.9% → 21.4% と上がり、会社予想は 23.0% を置く。2026/3 期は売上 +7.6% に対して営業利益 +15.7% で、伸びの 2 倍で利益が増えた。

経常利益は営業利益より 2〜3 割多い。現預金が厚く、その受取利息と、中国の合弁 2 社の持分法 利益が乗る。2023/3 期の経常利益率は 27.2%、2026/3 期は 26.5%。

部門 2026/3 売上 前期比 構成比 Q1 売上 前年同期比
FA 2,084.78 +7.0% 24.3% 573.52 +15.5%
ロボット 3,786.10 +14.9% 44.1% 961.03 +18.7%
ロボマシン 1,296.00 -5.8% 15.1% 416.54 +22.8%
サービス 1,411.43 +4.4% 16.5% 359.26 +13.0%

単位は億円。Q1 は 2027/3 期の第 1 四半期。

2026/3 期の伸びはロボットで、会社は「中国では EV 関連向け、一般産業向けが好調に推移し、 売上が大きく増加」と書く。国内は自動車向けが戻らず減った。第 1 四半期は 4 部門とも 2 桁で 伸び、国内の自動車向けだけがまだ低調とある。

中国の比重は数字にも出ている。中国でロボットを売る SHANGHAI-FANUC Robotics (当社 50%、 持分法適用) は、2026/3 期に売上の 10.4% (896.4 億円) を占める最大の売り先になった。前期は 10% 未満で記載が無い。当社はこの会社に売り、この会社の利益の半分を持分法で受け取る。

期末 総資産 純資産
2024/3 19,260.37 17,192.00
2025/3 19,370.31 17,398.90
2026/3 20,907.00 18,829.47

純資産が総資産の 9 割になる。2026/3 期の研究開発費は 449.6 億円、受注高は 8,834.7 億円 (+11.0%)。

第 1 四半期は利益が売上より速く、経常は持分法が押した

2027/3 期の会社予想と、第 1 四半期 (2026-04-01 〜 2026-06-30) の実績。

項目 通期予想 Q1 実績 進捗 前年同期 前年比 前年の Q1 進捗
売上高 9,481.00 2,310.35 24.4% 1,963.63 +17.7% 22.9%
営業利益 2,180.00 534.92 24.5% 424.28 +26.1% 23.1%
経常利益 2,712.00 681.93 25.1% 515.52 +32.3% 22.7%
純利益 1,980.00 509.81 25.7% 378.44 +34.7% 22.7%

単位は億円。前年の Q1 進捗は、2026/3 期の Q1 実績を同期の通期実績で割ったもの。

進捗はどの段も前年を 1〜3 ポイント上回る。営業利益率は 23.2% (前年同期 21.6%)。売上総利益率は 39.4% (39.0%) でほぼ変わらず、販管費の伸び (+10.0%) が売上 (+17.7%) より遅いことで利幅が出ている。

経常利益の伸びが営業利益より速いのは、持分法の利益が 66.9 → 113.7 億円 (+70%) に増えたためになる。 経常の増益 166.4 億円のうち 46.8 億円がこれにあたる。持分法の相手は北京と上海の合弁 2 社で、 どちらも中国の会社になる。

会社は第 1 四半期と同じ 2026-07-31 に予想を上げた。売上 9,096 → 9,481 億円 (+4.2%)、営業利益 2,122 → 2,180 億円 (+2.7%)、純利益 1,849 → 1,980 億円 (+7.1%)。営業利益の上げ幅は、第 1 四半期の 前年比の上振れ (営業利益 +26.1%) に比べて小さい。7 月以降の為替は 150 円/ドル、175 円/ユーロを 置いている。

フィジカル AI は、ロボットを外の AI に開く形で進める

2026/3 期の有報は、研究開発の成果に「ロボット分野におけるフィジカル AI のアプリケーション事例を 発表」と書き、手段を 3 つ挙げる。オープンソースのロボット開発基盤 ROS 2 で当社のロボットを動かす ドライバを GitHub に公開した。AI 開発で使う Python を、PC なしにロボットの制御装置の上で動かせる ようにした。PC からの動作指令を 1 ms 周期で実行する機能を作った。外の AI がファナックの ロボットを動かせるようにする方向で、基盤モデルを自前で作るとは書いていない。

組む相手は、会社の発表でこう並ぶ。

発表日 相手 中身
2025-12 NVIDIA Jetson と NVIDIA の AI インフラでフィジカル AI を実装。Isaac Sim に正式対応し、当社のシミュレータ ROBOGUIDE と統合
2026-05-13 Google Gemini Enterprise と Google Cloud で AI エージェントがロボットを操る仕組み。全ロボットを Intrinsic の基盤に対応させる予定。Gemini Robotics の Trusted Tester に参加
2026-05-15 NVIDIA Isaac GR00T N の模倣学習で、協働ロボット CRX の双腕が T シャツを畳む。Jetson Thor で演算性能を 7.5 倍以上に
2026-07-16 富士通 フィジカル AI の事業検討を始める。当社のロボット制御と富士通の AI インフラを組み合わせる

頭脳は NVIDIA と Google に任せ、自社は体と制御を出す。地図の「日本は本体が厚く、頭脳が薄い」を、 1 社の中でそのままなぞる形になる。どの AI が勝っても載せ替えられる一方、AI の側の利幅は取れない。 今の業績に、フィジカル AI の売上として切り出せる数字は無い。

株価は高値から 29% 下げ、上方修正の翌日に 14% 下げた

2026-09-25 の終値は 5,985 円。時価総額は 55,850 億円になる (2027/3 期第 1 四半期決算短信の期末 発行済株式数から自己株式を除いた 9 億 3,316 万株)。PER や PBR は冒頭の指標の表にある。

年 安値 高値
2024 3,681 4,703
2025 3,114 6,315
2026 5,302 8,428

東証の日々の終値。2024 年は 1 月 4 日から。1 年前 (2025-09-26) の 4,305 円から +39%。直近 250 営業日の 安値は 2025-10-02 の 4,138 円、高値は 2026-05-25 の 8,428 円。今は高値の 71%。

日付 騰落 何があったか
2025-12-02 +6.5% 前日 (12-01) に NVIDIA との協業を発表
2025-12-04 +13.0% ハーモニック +13.9%、安川電機 +11.4% と揃って上げた
2026-04-27 +16.0% 本決算 (04-24 の引け後) の翌営業日。ハーモニックも +16.4%
2026-08-03 -14.3% 第 1 四半期と上方修正 (07-31 の引け後) の翌営業日

騰落は前営業日の終値との比。

2026-08-03 の下げは当社に固有になる。同じ日の日経平均は -0.94% で、日米の為替介入による円高で 輸出株が売られた日だった。そのなかで当社は 14.3% 下げている。日経は 4〜6 月期の実績が「物足りない」 と受け止められたと報じた。第 1 四半期は増収増益で予想も上げたが、上げ幅は前節のとおり小さい。 ハーモニック・ドライブ・システムズも、1 週間後に上方修正の翌日で 10.9% 下げている。

2025 年 12 月の上げは NVIDIA との協業が起点で、日経は「フィジカル AI の実用化でロボットの販売拡大や 利益率の改善が進むとの期待」と書き、株価が 2018 年以来の高値を付けたと報じた。 高値の 2026-05-25 は、Google (05-13) と NVIDIA (05-15) の発表の直後にあたる。

株主は機関投資家だけで、オーナーはいない

2026/3 期の有価証券報告書、大株主の状況。

順 株主 比率
1 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 23.41%
2 日本カストディ銀行 (信託口) 10.32%
3 シティバンク エヌエイ エヌワイ (ADR の預託銀行) 2.97%
4 ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 2.25%
5 ジェーピー モルガン チェース バンク 380055 2.05%
6 ジェーピー モルガン チェース バンク 385781 1.69%
7 ビーエヌワイエム アズ エージーテイ クライアンツ ノン トリーティー ジャスデック 1.54%
8 ビーエヌワイエム アズ エージーテイ クライアンツ 10 パーセント 1.39%
9 ザ バンク オブ ニューヨーク メロン 140040 1.31%
10 エイチエスビーシー ホンコン トレジャリー サービシィズ アカウント アジアン エキュイティーズ デリバティブス 1.26%

上位 10 名で 48.2%。国内の信託口 2 つで 33.7%、残りは海外の保管銀行になる。事業会社も 創業家も上位にいない。持ち合いの色も無い。

出し方

  • 指標は 2026-09-25 の終値で出した。時価総額は、直近の決算短信の期末発行済株式数から自己株式を 除いた株数を掛けた。予想 PER は会社予想の 1 株利益、PBR は直近の四半期末の自己資本 (株主資本と 評価・換算差額等の合計)、予想 ROE は会社予想の純利益を同じ自己資本で割った。手元資金の純額は、 直近の四半期末の現金及び預金と短期の有価証券から借入金を引いた (リース債務は含めない)
  • ファナックの配当利回りは、2026/3 期の本決算短信の年間配当の実績で出した
  • 業績は各期の有価証券報告書の「主要な経営指標等」と連結損益計算書。2027/3 期の予想と 第 1 四半期は 2026-07-31 開示の第 1 四半期決算短信。修正前の予想は同じ短信の「連結業績予想に 関する説明」
  • 部門別の売上は 2026-04-24 開示の本決算短信と、2026-07-31 開示の第 1 四半期決算短信の 「経営成績に関する説明」
  • 第 1 四半期の売上総利益、販管費、持分法の利益は第 1 四半期決算短信の四半期連結損益計算書
  • 主要な販売先、受注高、研究開発、持分法適用関連会社は 2026/3 期の有価証券報告書の「生産、 受注及び販売の実績」「研究開発活動」「関係会社の状況」
  • 株価は東証の日々の終値。この期間に株式分割は無い
  • 協業の中身は会社のニュースリリースと新商品紹介のページを開いて確かめた。株価の反応の理由は 日経の記事を開いて確かめた

未確定

  • 2026-04-27 の +16.0%。 本決算の翌日で、ハーモニックも同じ幅で上げた。予想の中身か、 受注か、自社株買いか。本決算短信の中身と市場の予想を突き合わせていない
  • 2025-12-04 の +13.0%。 NVIDIA の発表 (12-01) から 3 日後に、ロボット株が揃って 1 割上げた。 国際ロボット展 (12 月 3 日から) との関係を確かめていない
  • 2026-08-03 の下げの中身。 「物足りない」が、営業利益の上げ幅なのか、受注なのか、部材の 調達なのか。報道の見出しには部材調達への懸念とするものもあったが、開いて確かめていない
  • 中国への依存度。 地域別の売上は有報のセグメント情報の「地域ごとの情報」にあるが、まだ 出していない。持分法の上海の合弁を通す分と、直接の分を足す必要がある
  • フィジカル AI が売上になる時期。 協業は 4 本並ぶが、どれも実証と対応の段階にある。受注や売上 として会社が数字を出すのはいつか