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フジクラ (5803) — データセンターの光配線で利益の 8 割を稼ぐ電線会社

本業はデータセンター向けの光配線で、2026/3 期に情報通信部門が営業利益の 81% を稼いだ。部門の利益率は 13.2% → 20.4% → 23.4% と上がり、2027/3 期第 1 四半期は 37.1% に達した。会社予想は期中に 2 度上げ、営業利益は期初の 2,110 億円から 4,320 億円へ 2 倍になった。期初予想は水素などの原材料不足を保守的に見込み、市場予想を大きく下回った。5 月に出した中期計画の最終年度 (2029/3 期) の営業利益目標 3,150 億円は、今期の予想ですでに超えている。株価は 2026-05-13 の高値から 1 週間で 45% 下げ、上方修正でストップ高を 2 日続けて戻した。今は高値の 63%、予想 PER 25 倍、PBR 13.6 倍、予想 ROE 54%。フィジカル AI の地図に載せたヒューマノイド向けケーブルは、業績の数字にはまだ出てこない。

光ファイバケーブル、光コネクタ、電線の会社。電線大手 3 社の 1 つで、事業は情報通信、エレクトロニクス、 自動車、エネルギー、不動産の 5 部門に分かれる。決算期は 3 月。2026-03-30 を効力日に、1 株を 6 株に 分割した。

国産 AI ハードウェアの地図 では CPO (光電融合) 向けの光ファイバ技術で、 フィジカル AI の地図 ではヒューマノイド向けの極細同軸ケーブルと 触覚センサーで載せた。どちらも研究や新市場の話で、稼いでいるのはデータセンターの光配線になる。

指標 (2026-09-25 時点)

項目 値
市場 東証プライム
業種 非鉄金属
株価 4,986 円
時価総額 82,576 億円
予想 PER 25.3 倍
PBR 13.57 倍
予想 ROE 53.6%
配当利回り (予想) 0.76% (年 38 円)
自己資本比率 56.8%
手元資金の純額 764 億円 (時価総額の 0.9%)
250 営業日の高値比 63%

PBR 13.6 倍は高い。ただ予想 ROE が 54% あり、PER で見ると 25 倍にとどまる。自己資本の厚さに比べて 利益が突出して大きい状態で、PBR の高さは利益の急増から来ている。2026/3 期の実績 ROE も 32.5% ある。 逆に言えば、この利益水準が続くかどうかに株価のほとんどが懸かっている。

情報通信が利益の 8 割を稼ぎ、その利幅が上がり続けている

期 売上高 営業利益 経常利益 純利益 営業利益率
2021/3 6,437.4 — 183.8 -53.7 —
2022/3 6,703.5 — 340.9 391.0 —
2023/3 8,064.5 — 679.0 408.9 —
2024/3 7,997.6 694.8 697.3 510.1 8.7%
2025/3 9,793.8 1,355.2 1,372.4 911.2 13.8%
2026/3 11,823.6 1,887.1 1,994.8 1,571.6 16.0%
2027/3 予想 17,550.0 4,320.0 4,530.0 3,260.0 24.6%

単位は億円。2023/3 期までの営業利益が空いているのは欠損ではない。有報の「主要な経営指標等」に 営業利益が載らないため、当期と前期しか遡れない。

5 年で経常利益は 183.8 → 1,994.8 億円と 11 倍になった。会社予想の 2027/3 期は、売上が +48%、 営業利益が 2.3 倍になる。

伸びはほぼ全部が情報通信部門から来ている。

部門 2024/3 売上 利益 2025/3 売上 利益 2026/3 売上 利益 利益率
情報通信 2,977 392 4,514 922 6,532 1,527 23.4%
エレクトロニクス 1,650 166 1,865 229 1,729 77 4.5%
自動車 1,795 12 1,771 58 1,794 68 3.8%
エネルギー 1,402 87 1,464 119 1,584 189 11.9%
不動産 105 49 108 49 110 50 45.5%

単位は億円。売上は部門間の取引を含む。利益率は 2026/3 期。

情報通信の利益率は 13.2% → 20.4% → 23.4% と 2 期で 10 ポイント上がった。2026/3 期は全社の売上の 55%、営業利益の 81% をこの部門が稼いでいる。会社は伸びた理由を「生成 AI の普及・拡大を背景とした データセンタ向けの需要」と説明する。ほかの 4 部門は横ばいで、エレクトロニクスはスマートフォン向けの 競争と材料費高で利益が 3 分の 1 に落ちた。

売り先は米国が中心になる。顧客の所在地で見た売上は、米国が 2025/3 期 4,643 億円 (47.4%)、2026/3 期 5,222 億円 (44.2%)。米国以外の「その他」が 2,286 → 3,679 億円 (+61%) と伸び、比率を上げている。 売上の 10% を超える単一の顧客は無い。

何を売っているかは有報の「対処すべき課題」にある。主力は細径で高密度の光ファイバケーブル 「SWR/WTC」と、多心の光コネクタ。2025 年度には 13,824 心の WTC を出し、データセンター同士を つなぐ用途に売り始めた。データセンターの中の配線と、データセンター間の配線の両方を取っている。

期末 総資産 純資産
2024/3 7,238.7 3,665.8
2025/3 8,303.1 4,353.3
2026/3 9,694.5 5,931.9

第 1 四半期は情報通信の利益率が 37% になった

2027/3 期の会社予想と、第 1 四半期 (2026-04-01 〜 2026-06-30) の実績。

項目 通期予想 Q1 実績 進捗 前年同期 前年比 前年の Q1 進捗
売上高 17,550 4,020.1 22.9% 2,679.1 +50.1% 22.7%
営業利益 4,320 1,048.3 24.3% 410.9 +155.1% 21.8%
経常利益 4,530 1,114.6 24.6% 417.8 +166.8% 20.9%
純利益 3,260 804.3 24.7% 313.2 +156.8% 19.9%

単位は億円。前年の Q1 進捗は、2026/3 期の Q1 実績を同期の通期実績で割ったもの。

情報通信は売上 2,644 億円 (+83.9%)、営業利益 980 億円 (+188.3%) で、利益率は 37.1% になった (前年同期は約 23.6%)。全社の営業利益の 93% をこの部門が出している。会社は「光コンポーネント製品を 中心に伸長したことに加え、米国以外の新規データセンタ案件として光コンポーネント製品の大量受注が あり」と書く。売上が 8 割増えて、利益が 3 倍近くになっている。値上げが効いていると読める (次の節)。

会社予想は期中に 2 度上げた。

開示日 売上高 営業利益 純利益 理由
2026-05-14 (期初) 12,430 2,110 1,560 光ケーブルの急な増産で水素などの原材料の調達が追いつかない懸念を保守的に見込む
2026-06-18 14,620 3,100 2,290 想定していなかったハイパースケーラーからの光コンポーネントのプロジェクト受注、売価の引き上げ、水素不足の影響の緩和
2026-08-07 17,550 4,320 3,260 第 1 四半期の実績を受けて。米国以外の新規データセンタ案件の大量受注

単位は億円。6 月の修正値と理由は会社の開示を報じた記事から引いた (出し方)。

進捗は 2 度上げたあとの予想に対しても前年より速い。 ただし中間期の予想は営業利益 1,980 億円で、 第 2 四半期の 3 か月に 932 億円しか置いていない。第 1 四半期の 1,048 億円より少ない。期初と同じく、 会社は予想を保守的に置く癖があると読める。

期初の保守的な予想と中期計画が、株価を半値にした

期初の予想は、市場の予想を大きく下回った。日経によると、純利益 1,560 億円は市場予想の平均 1,955 億円に、営業利益 2,110 億円は 2,636 億円に届かなかった。発表は 2026-05-14 の取引時間中 (14:00) で、株価はその日のうちにストップ安まで下げた。

5 日後の 2026-05-19 には、2029/3 期までの中期経営計画を出した。最終年度の目標は売上 1 兆 6,000 億円、 営業利益 3,150 億円 (利益率 19.7%)。市場の事前予想の平均は営業利益 4,605 億円だったと報じられ、 株価は 16.9% 下げた。光ファイバケーブルの生産能力を最大 3 倍にする日米で最大 3,000 億円の投資も この計画に入っている。

中期計画の最終年度の目標は、今期の予想で 2 年前倒しで超えた。 8 月の予想の営業利益 4,320 億円は、 2029/3 期の目標 3,150 億円を 37% 上回る。売上 1 兆 7,550 億円も目標の 1 兆 6,000 億円を超えている。 計画が保守的だったのか、今期の需要が一過性なのか。SMBC 日興証券のアナリストは 6 月の増額を 「一過性」としつつ、「過度に保守的なガイダンス」の改善を求めたと報じられた。

株価は 1 年で 2.1 倍、5 月の高値から 37% 下

年 安値 高値
2024 184 1,117
2025 599 3,588
2026 2,813 7,855

東証の日々の終値。株式分割を調整した値で、2024 年は 1 月 4 日から。2024 年の安値から 27 倍になった。 1 年前 (2025-09-26) の 2,350 円から 2.1 倍。直近 250 営業日の高値は 2026-05-13 の 7,855 円で、 今は高値の 63%。

日付 騰落 何があったか
2026-05-14 -19.1% 本決算 (14:00)。期初予想が市場予想を下回りストップ安
2026-05-15 -8.4% 住友電工 -9.3%、古河電工 -4.8% と揃って下げた
2026-05-19 -16.9% 中期経営計画の発表 (取引時間中)
2026-05-20 -8.5% 高値から 5 営業日で 45% 下げて 4,295 円
2026-06-19 +15.7% 前日引け後の 1 回目の上方修正でストップ高
2026-06-22 +19.4% 2 日続けてストップ高
2026-06-23 +5.3% AI・半導体株が総崩れの日。古河電工は -15.5%
2026-08-07 +12.8% 2 回目の上方修正 (14:00)。同じ日にレーザーテックは予想が市場予想を下回り 14% 安

騰落は前営業日の終値との比。06-19 と 06-22 はストップ高で、出来高はふだんの 20 分の 1 程度しか なかった。

高値の時期は電線株で揃っている。2025-09-26 から 2026-05-13 までに古河電気工業は 6.5 倍、 住友電気工業は 3 倍、フジクラは 3.3 倍になり、そこから 9 月末までに 3 社とも 3 割強下げた (古河 -34%、 住友 -31%、フジクラ -37%)。5 月の下げには、自社の決算と中期計画という固有の理由と、電線株全体の 下げの両方が乗っている。その後は、6 月と 8 月の上方修正の日だけフジクラが同業から離れて上げた。

ロボット株 は 7〜8 月の決算で期待が剥げて戻らなかった。フジクラは 逆で、決算が期待を上回って戻した。同じ AI 関連でも、四半期の数字が裏づけるかどうかで分かれている。

株主は信託口と金融機関で、オーナーはいない

2026/3 期の有価証券報告書、大株主の状況。

順 株主 比率
1 日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 19.09%
2 日本カストディ銀行 (信託口) 7.50%
3 大樹生命保険 2.58%
4 三井住友銀行 2.53%
5 日本カストディ銀行 (三井住友信託銀行退職給付信託口) 2.03%
6 STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 1.81%
7 静岡銀行 1.74%
8 JP MORGAN CHASE BANK 385781 1.45%
9 HSBC HONG KONG-TREASURY SERVICES A/C ASIAN EQUITIES DERIVATIVES 1.38%
10 GOVERNMENT OF NORWAY 1.29%

上位 10 名で 41.4%。国内の信託口 2 つで 26.6%。大樹生命、三井住友銀行、静岡銀行、三井住友信託の 退職給付信託と、金融機関の持ち合いの色が残る。事業会社と創業家は上位にいない。

出し方

  • 指標は 2026-09-25 の終値で出した。時価総額は、2026-08-07 開示の第 1 四半期決算短信の期末発行済 株式数から自己株式を除いた 16 億 5,616 万株を掛けた。予想 PER は会社予想の 1 株利益 196.88 円、 PBR と予想 ROE の分母は第 1 四半期末の自己資本 6,086 億円。手元資金の純額は第 1 四半期末の現金及び 預金から、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、長期借入金を引いた。実績 ROE は 2026/3 期の 純利益を期首と期末の自己資本の平均で割った
  • 業績は各期の有価証券報告書の「主要な経営指標等」と連結損益計算書。部門別は 2025-05-13 と 2026-05-14 開示の本決算短信のセグメント情報。第 1 四半期は 2026-08-07 開示の第 1 四半期決算短信
  • 地域別の売上と主要な顧客は 2026/3 期の有価証券報告書のセグメント情報の関連情報。製品と投資計画は 同じ有報の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」と「研究開発活動」
  • 期初予想とその理由は 2026-05-14 開示の本決算短信の「今後の見通し」。6 月 18 日の修正値と理由は ダイヤモンド ZAi オンラインの記事 (2026-06-18) を開いて確かめた。8 月の修正値は第 1 四半期決算短信
  • 株価は東証の日々の終値 (株式分割を調整した値)。同業は住友電気工業、古河電気工業
  • 市場予想との比較と中期計画の目標は、日経、ニューズウィーク日本版、東洋経済の記事を開いて確かめた

未確定

  • 利益率 37% がどこまで続くか。 売上 +84% に利益 +188% は、値上げと稼働率の両方が効いていると 読める。会社は 6 月に「少なくとも上期に実現した売価アップ」は下期も続くと書いたと報じられている。 値上げが通るのは供給が足りないうちだけで、3,000 億円の増産投資が立ち上がると需給が変わる
  • 米国以外の大量受注の相手。 第 1 四半期の短信は「米国以外の新規データセンタ案件」とだけ書く。 どの国の誰か、一度きりか
  • 中期計画を上方修正するか。 最終年度の目標を今期の予想ですでに超えている。会社が計画を 出し直すか、据え置くか
  • 水素の調達。 期初はこれを理由に予想を抑えた。6 月に「緩和」とされたが、増産が進むと再び 制約になり得る
  • ヒューマノイド向けケーブルと触覚センサーの売上。 フィジカル AI の地図で拾った製品は、 エレクトロニクス部門のどこかに入るはずだが、数字は開示されていない
  • CPO 向けの光ファイバ。 AI ハードウェアの地図で拾った技術が、いつ製品と売上になるか