スター・マイカ・ホールディングス(2975)2026年11月期 Q1 決算分析レポート
スター・マイカ・ホールディングス(2975) の2026年11月期 第1四半期決算を分析します。Q1として過去最高の売上高・各段階利益を計上し、通期計画に対する営業利益進捗率は37.6%となりました。
総合判断
何が起きたか
2026年11月期Q1は、売上高213.0億円(前年同期比+32.4%)、営業利益34.9億円(同+51.5%)、純利益24.2億円(同+70.3%)で着地しました。いずれもQ1としての過去最高を更新しています。通期予想(営業利益92.9億円)に対する進捗率は37.6%、純利益に至っては47.5%に達しており、通常Q1の理論進捗25%を大きく上回っています。
なぜ起きたか
主力のリノベマンション事業で、出口戦略の多角化が収益性の向上に直結しています。従来の「退去後にリノベして販売」に加え、「賃貸中のまま投資家向けに販売」する選択肢を拡大したことで、物件の回転率が向上しました。Q1のリノベマンション事業の利益率は19.9%と、前年同期比で3.9ポイント改善しています。
前期(2025年11月期)に中期経営計画「Find the Value 2026」の目標を1年前倒しで達成したことを受け、今期の計画自体を売上高847億円・営業利益92億円へ引き上げた上でのこの進捗です。
それは続くのか
両面の材料があります。
- 同社のビジネスモデルは、都市部の中古マンション市場において「オーナーチェンジ物件」という独自の仕入れルートを持つ点で差別化されています。累計18,000戸超の購入実績に基づく査定ノウハウは、短期間で模倣されにくい構造的な強みです
- 一方、販売用不動産(在庫)は1,141億円(前期末比+91.5億円)まで積み上がっています。これは将来の売上の源泉である一方、金利上昇局面では仕入れコスト増と住宅ローン金利上昇による需要減退の両面から収益を圧迫する可能性があります
- 有利子負債も増加傾向にあり、金利動向がこのビジネスモデルの最大の変数です。ただし、保有物件から賃料収入を得ながら売却タイミングを待てる点は、一般的な不動産転売業者とは異なる特徴です
投資家として何を見るべきか
- Q2決算(2026年6月発表予定)での通期予想修正の有無: Q1進捗率37.6%は前年同期のQ1進捗率(36.6%)を上回っています。前年はQ3で上方修正(営業利益+14.8%)を行っており、今期も同様のタイミングで修正が出るかが確認ポイントです
- 販売用不動産の増減と回転期間: 在庫1,141億円の消化スピード。在庫回転期間が長期化する場合、金利負担増による収益圧迫が懸念されます
- 金利環境の変化: 日銀の金融政策変更による住宅ローン金利の推移。同社は22の金融機関との当座貸越契約(未実行残高87億円)を確保していますが、調達コストの上昇は利益率に直接影響します
サプライズ度
Q1決算のため通期予想の修正はなく、予想修正倍率はありません。ただし、通期営業利益予想92.9億円に対してQ1で34.9億円(進捗率37.6%)を計上しており、前期のQ1進捗率36.6%を上回るペースです。
Q1進捗率が利益面で37〜47%と高水準。前年もQ3で上方修正を行っており、今期も同様の展開となる可能性があります。
業績サマリー
| 2026/11期 Q1実績 | 前年同期比 | 2026/11期 通期予想 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 213.0億 | +32.4% | 847.2億 |
| 営業利益 | 34.9億 | +51.5% | 92.9億 |
| 経常利益 | 34.6億 | +65.3% | 74.9億 |
| 純利益 | 24.2億 | +70.3% | 50.9億 |
全項目で前年同期を大幅に上回りました。通期予想に対する進捗率は、売上高25.1%に対し営業利益37.6%、純利益47.5%と利益面の進捗が顕著です。通期予想は前期比+22.5%増収・+27.1%営業増益の計画であり、会社側の増収増益基調の見通しに対してQ1は上振れペースで推移しています。
四半期ごとの進捗推移
直近2期のQ1を比較します。
| 2026/11期 Q1 | 前年同期比 | 2025/11期 Q1 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 213.0億 | +32.4% | 160.9億 |
| 営業利益 | 34.9億 | +51.5% | 23.1億 |
| 純利益 | 24.2億 | +70.3% | 14.2億 |
前期(2025/11期)は四半期ごとに加速する展開でした。Q1の営業利益率は16.4%で、Q2累計11.9%、Q3累計12.0%、通期10.6%と、Q1偏重の季節性があります。今期Q1も同様に利益率が高く出ている面があり、通期では平準化される可能性があります。
前期の四半期推移(営業利益・累計):
- Q1: 23.1億円(進捗率36.6%)
- Q2: 40.2億円(進捗率63.8%)
- Q3: 58.4億円(進捗率80.7%)→ Q3で上方修正(62.9→72.3億円、+14.8%)
- 通期: 73.1億円
セグメント別モメンタム
リノベマンション事業 が売上高の98%、営業利益の87%を占める一極集中の構造です。Q1の営業利益率は15.2%→19.9%(前年同期比+4.7pt改善、AI要約値ベース)と、収益性が大幅に向上しています。出口戦略の多角化(賃貸中販売の拡大)によって回転率と利益率の双方が改善した結果です。
アドバイザリー事業 は売上3.6億円に対して営業利益4.8億円と、利益が売上を超えています。仲介手数料収入が好調に推移しました。
インベストメント事業 は一棟物件の売却タイミングによる端境期で、Q1は実質的に休止状態です。前年同期は1.4億円の営業利益を計上していたため、今期の通期計画ではこのセグメントの回復が含まれている可能性があります。
5年トレンド
収益性の推移
ROE・営業利益率
ROEは2022/11期の17.5%をピークに一旦低下した後、直近2期は回復基調にあり、2025/11期は15.2%に到達しました。不動産業の業種平均ROE(約12.1%)を上回る水準です。財務レバレッジ(約4.0倍)を活用した資本効率の高い経営が特徴です。
EPS・配当の推移
EPS・DPS
EPSは2022/11期の107.2円から2023/11期に79.6円へ落ち込みましたが、その後2期連続で回復し、2025/11期は124.4円と過去最高を更新しました。配当は2023/11期に20円へ減配した後、2024/11期23円→2025/11期37円と増配に転じています。今期予想は45円(+8円増配)で、総還元性向40%の方針に沿ったものです。
キャッシュフローの推移
キャッシュフロー
営業CFが5期連続でマイナスとなっていますが、これは同社のビジネスモデルの特性によるものです。オーナーチェンジ物件を仕入れ(販売用不動産の増加として営業CFに計上)、賃料を受け取りながら保有し、退去後に売却するため、成長期には在庫投資が利益を上回ります。2025/11期は販売用不動産が92.1億円増加し、税引前利益61.5億円を大きく超えました。その分、財務CFで70.0億円の借入を行い資金を確保しています。
有価証券報告書から見る企業体質
前期(2025/11期)の有報AI要約から、以下の構造的特徴が読み取れます。
- 独自の仕入れルート: 賃借人が居住中の「オーナーチェンジ物件」を対象とすることで、一般的な不動産業者との競合を回避。累計18,000戸超の取引実績に基づく査定精度が差別化要因
- 在庫の二面性: 販売用不動産1,050億円(2025/11期末)は売上高を上回る規模。成長のための攻めの在庫であると同時に、市況悪化時には評価損リスクを内包(当期の評価損は0.9億円と軽微)
- 資本政策: DBJ(日本政策投資銀行)を割当先とする第三者割当増資(約7億円)を実施し、信用力を補完。22の金融機関との当座貸越契約を維持
- 株主還元: 総還元性向40%を目標。PBR1倍割れ局面では機動的に自社株買いを実施する方針
来期の注目ポイント
- 通期予想は売上高847億円(+22.5%)、営業利益92.9億円(+27.1%)、純利益50.9億円(+21.7%)。Q1進捗率から上方修正の可能性が注目されます
- 中期経営計画を前倒し達成した後の「次の中計」がいつ発表されるか。成長の持続性を示す材料になります
- 配当は年45円(前期37円)の予想。総還元性向40%の方針に基づき、業績上振れ時には増配余地があります
懸念点
- 金利上昇リスク: 有利子負債が増加傾向にあり、金利上昇は仕入れコスト増と住宅ローン需要の減退の両面で収益に影響する可能性があります
- 在庫リスク: 販売用不動産が1,141億円(Q1末)に到達。市況が悪化した場合、在庫の評価損や回転期間の長期化が懸念されます
- セグメント集中: リノベマンション事業が売上の98%を占めており、中古マンション市場の変調がそのまま業績に直結する構造です
- 営業CFの恒常的マイナス: ビジネスモデル上の特性とはいえ、在庫投資の資金を借入で賄い続ける構造は、金融市場の混乱時にリファイナンスリスクを伴います