Sansan(4443)2026年5月期 Q3 決算分析レポート

決算短信公開日: 2026-04-10

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Sansan(4443) の2026年5月期第3四半期決算を分析します。Q3累計の売上高は392.6億円(前年同期比+26.1%)、営業利益は59.5億円(同+214.5%)で着地し、通期予想の下限値が上方修正されました。


総合判断

何が起きたか

2026年5月期Q3累計(2025年6月〜2026年2月)は、売上高392.6億円(前年同期比+26.1%)、調整後営業利益60.9億円(同+131.1%)、営業利益59.5億円(同+214.5%)、純利益41.1億円(同+142.1%)で着地しました。売上の伸び(+26.1%)に対して調整後営業利益の伸びが+131.1%と大幅に上回り、営業レバレッジが明確に現れた四半期となっています。

会社側は同時に通期業績予想の下限値を引き上げており、売上高下限を527.1億円→535.7億円(+1.6%)、調整後営業利益下限を68.5億円→80.4億円(+17.3%)としました。

なぜ起きたか

3つの要因が利益率の改善に寄与しています。

第一に、Bill One事業の高成長の継続です。請求書受領サービス「Bill One」の売上高は前年同期比+40.7%で、解約率は0.30%(前年同期0.39%)に改善しています。インボイス制度対応や経理DX需要が追い風となり、契約社数・単価の両面で拡大が続いています。

第二に、Sansan事業の安定成長と高粗利です。主力の「Sansan」は売上高+17.9%、全社の売上総利益率は87.6%と高水準を維持しました。SaaS型の固定費ビジネスにおいて、トップライン成長がそのまま利益改善に直結する構造です。

第三に、Eight事業の黒字転換です。Q3累計で売上高47.9億円(+38.5%)、調整後営業利益2.5億円(前年0.4億円)となりました。BtoBサービスが+41.0%で伸長し、赤字事業の位置づけから利益貢献セグメントへと転じています。

それは続くのか

持続性については、強さと注意点の両面があります。

  • 強さ: Bill Oneの解約率は0.30%と極めて低く、累積課金ベースの売上が積み上がる構造。Sansan事業の解約率も0.54%と低水準で、ストック型ビジネスとしての足腰は強い状態です
  • 注意点: Sansan事業の解約率は前年同期の0.41%から0.54%へと0.13ポイント上昇しています。0.5%を超えた点については、今後の推移が確認ポイントとなります
  • 会計的な留意点: Q4には、ログミー株式会社の全株式譲渡(譲渡価格16.5億円)に伴う特別利益の計上が見込まれ、通期純利益は事業の実力値以上にかさ上げされる可能性があります

会社側は2027年5月期の調整後営業利益率方針を従来の「18〜23%」から「20〜23%」へ引き上げています。一方で株式報酬費用(調整項目)は株価水準に連動するため、段階利益の見通しには振れが残ります。

投資家として何を見るべきか

  • Q4決算(2026年7月発表予定)での着地と通期予想上限値の達成度: 通期予想は下限を引き上げたものの上限値(売上543.4億円・調整後営業利益81.5億円)は据え置いています。Q4単体での営業レバレッジの発現度合いと、レンジのどこに着地するかが確認ポイントです
  • Bill Oneの成長率とSansanの解約率: Bill Oneの+40%台成長が続くか、Sansan事業の解約率上昇が一過性か構造的変化かを、次四半期の数値で確認する必要があります
  • ポートフォリオ最適化の次の動き: ナインアウト(旧クリエイティブサーベイ)の子会社化やログミー社の譲渡など、会社側は事業ポートフォリオの入れ替えを積極化しています。資本効率の観点でどの事業を残し、どこに投資するかが中期の論点となります

サプライズ度

通期業績予想のうち、売上高下限が+1.6%、調整後営業利益下限が+17.3%の上方修正となりました。売上よりも利益側の上振れ幅が大きい一方、上限値は据え置かれており、修正の対象は下限値に限定されています。

サプライズ度

調整後営業利益の下限値を+17.3%引き上げ。売上(+1.6%)に対して利益側の修正幅が大きく、営業レバレッジの発現とコスト効率化が寄与した内容です。


業績サマリー

2026/5期 Q3累計実績 前年同期比 2026/5期 通期予想(下限値)
売上高 392.7億 +26.1% 535.7億
調整後営業利益 60.9億 +131.1% 80.4億
営業利益 59.5億 +214.5% -
経常利益 59.4億 +220.2% -
純利益 41.1億 +142.1% -

売上高の成長率+26.1%に対し、調整後営業利益は+131.1%、会計上の営業利益は+214.5%と増益率が大きく拡大しました。売上総利益率が87.6%と高く、人件費率の低下など固定費コントロールが寄与した結果となっています。通期の調整後営業利益下限80.4億円に対するQ3累計進捗率は75.7%で、前年同期の通期実績比進捗率74.1%を上回っています。

なお、会社側は通期の営業利益・経常利益・純利益の予想を公表していないため、上表の通期予想欄は売上高と調整後営業利益のみ記載しています。


四半期ごとの進捗推移

2026年5月期の単四半期推移(前年同期からの単純比較):

  • Q1単体: 売上122.8億円(前年同期比+28.2%)、営業利益5.3億円(前年△3.3億円から黒字化)
  • Q2単体: 売上131.0億円(同+26.6%)、営業利益23.9億円(同+1,946%)
  • Q3単体: 売上138.8億円(同+24.8%)、営業利益30.4億円(同+163.5%)

単四半期ベースでは、売上高は+25〜28%のレンジで安定的に推移しており、営業利益の伸びが四半期ごとに加速する構図です。前年同期の営業利益が四半期によってばらついていた反動もあり、伸び率は見かけ上大きくなっています。


セグメント別モメンタム

Sansan/Bill One事業
343.3 億円
+25.2%
好調
Eight事業
47.9 億円
+38.5%
好調

Sansan/Bill One事業 (売上構成比87.7%)は売上高343.3億円(+25.2%)で、全社成長の主軸となっています。内訳では主力「Sansan」が+17.9%、急成長中の「Bill One」が+40.7%で、Bill Oneが売上規模でSansan事業の中でも存在感を増しています。Sansanの解約率は0.54%(前年0.41%)、Bill Oneは0.30%(同0.39%)と、両サービスとも月次1%未満の低解約率を維持しています。

Eight事業 (同12.2%)は売上高47.9億円(+38.5%)で、全セグメントの中で最も高い成長率を記録しました。BtoBサービスが+41.0%で伸長し、調整後営業利益は2.5億円(前年0.4億円)と黒字幅が拡大しています。ただしQ3単体では、大型イベント開催費用の計上により調整後営業利益が前年同期比-24.3%となっており、会計期間によるブレが残っています。


5年トレンド

収益性の推移

ROE・純利益率

ROEは2022/5期の7.1%をピークに、2023/5期は純損失を計上し、2024/5期に7.1%に回復した後、2025/5期は2.9%に低下しました。2025/5期の低下は、売上高は+27.5%と急増した一方で、Unipos社との提携解消に伴う株式売却契約損失引当金(約23億円)を特別損失に計上したことにより純利益が424百万円まで圧縮されたことが主因です。会計上の表面値は小さいものの、調整後営業利益ベースでは前期比+108%の35.5億円で、本業の収益力は大きく改善しています。今期(2026/5期)の調整後営業利益は下限値でも80.4億円と、前期から倍増規模となる計画です。

EPS・売上高の推移

EPS・売上高

売上高は過去5年間で161.8億円→432.0億円と2.67倍に拡大しており、年平均成長率は+27.8%に達しています。一方でEPSは一桁台で推移しており、成長投資の先行や特別損失の計上により会計上の利益が売上の伸びに追いついていない状況です。配当は創業以来無配を継続しており、会社側は成長投資優先の方針を明示しています。

キャッシュフローの推移

キャッシュフロー

営業CFは5年間で30.1億円→96.5億円へと3.2倍に拡大しました。SaaSモデル特有の前受金計上と、ストック型売上の積み上げが寄与しています。特に2025/5期は前年比+76.0%と大幅に増加し、純利益(4.2億円)を大きく上回るキャッシュ創出力を示しています。投資CFは事業投資・M&Aに応じて年度ごとに振れがあり、財務CFは増資・借入と返済のタイミングで正負が入れ替わる構成です。


有価証券報告書から見る企業体質

前期(2025/5期)の有報AI要約から、以下の特徴が読み取れます。

  • 首位独占の市場ポジション: 営業DXサービス「Sansan」は市場シェア84.1%、クラウド請求書受領サービス「Bill One」は同47.0%で、ともに首位。プラットフォーム優位性に基づく参入障壁を形成しています
  • SaaS特有のキャッシュ創出力: 営業CFは前期96.5億円と純利益を大きく上回る水準。前受金計上による運転資本のマイナスが効いており、ストック売上の積み上げが財務体質を底支えしています
  • 成長投資優先の配当方針: 創業以来無配を継続。利益剰余金はプロダクト開発・人員採用・M&Aに再投資する方針を明示しています
  • 特別損失の計上による会計上の利益圧縮: 2025/5期は株式売却契約損失引当金23億円を特別損失に計上し、純利益が前期953百万円から424百万円に減少。本業の収益力(調整後営業利益+108%)とは乖離しています

来期の注目ポイント

  • 2026/5期の通期業績予想は、売上高535.7億〜543.4億円(前期比+24.0〜+25.8%)、調整後営業利益80.4億〜81.5億円(同+127〜+130%)。Q4単体での着地がレンジのどこに収まるかが注目されます
  • ログミー株式会社の全株式譲渡(譲渡価格16.5億円)がQ4以降に完了し、特別利益が計上される見通しです
  • 2027/5期の調整後営業利益率方針が「20〜23%」に引き上げられており、中期目標に向けた進捗が中長期の確認ポイントとなります
  • ナインアウト株式会社(旧クリエイティブサーベイ)の子会社化(取得原価14.1億円)によるアンケート・CXデータ領域の強化がどの時期から業績に反映されるかも確認ポイントです

懸念点

  • Sansan事業の解約率の上昇: 主力Sansanの解約率が前年同期の0.41%から0.54%に上昇。絶対水準は低いものの、上昇トレンドが続くかは今後の推移が確認ポイントです
  • Eight事業の利益のぶれ: Q3累計では黒字化したものの、Q3単体の調整後営業利益はイベント開催費用で前年同期比-24.3%。通期での利益寄与は安定していません
  • 株式報酬費用による段階利益の変動: 調整後営業利益と会計上の営業利益の乖離は株式報酬費用が主要因。株価水準に連動するため、見かけの利益率には振れが生じます
  • 通期純利益の会計上の膨らみ: ログミー社譲渡に伴う特別利益が計上される場合、純利益は本業の実力値以上に膨らむ可能性があります。継続的な収益力は調整後営業利益ベースでの評価が必要となります